自己破産すると自動車・バイクはどうなるの?①~自己破産における財産処分(その7)~
こんにちは。管理人です。
借金地獄からに脱却における必殺技、「自己破産」。
自己破産をした場合には、借金をチャラにしてもらう(=免責を受ける)ために、「自由財産」を除く保有資産を差し押さえられることになります。
その「財産処分」について、一つずつ見ていきましょう。
今回は「自己破産すると自動車・バイクはどうなるの?(その1)」についてです。
自己破産における自動車・バイクなどの取扱いの原則
自己破産した場合に自動車やバイクはどうなるのか?という疑問をお持ちの方は非常に多いようです。
一般的に、自己破産すると、自動車やバイクを処分しなければならなくなるのが、原則です。
ただし、常に処分されるというわけではありません。
例外的に自動車やバイクを処分しなくて済むこともあります。
では、どのような場合に自動車やバイクを失うことになり、どのような場合に残すことができることになるのでしょうか?
まず、その自動車やバイクの購入ローンが残っているのかどうかを確認する必要があります。
以下、ローンの残っていない場合とローンの残っている場合とに分けて、見ていきましょう。(今回は「ローンの残っていない場合」についてご紹介します)
ローンの残っていない自動車・バイク
自己破産をすると、「自由財産」に該当する財産を除いて、財産の換価処分が必要となりますが、自動車やバイクは原則として、自由財産に該当しません。
さらに、ローンの残っていない自動車やバイクは純粋に資産・財産となります。
ですから、自由財産に該当しない以上は、所有している自動車やバイクは換価処分しなければならないのが原則、というわけです。
もっとも、東京地裁では、破産者の経済的更生を図ることを目的として、破産法に定められているものよりも自由財産として認められる財産の範囲を拡大する運用を採用しています。(*1)
この東京地裁の基準においては、処分見込額が20万円以下の自動車は、自由財産の拡張によって自由財産として取り扱われるものとされています。
バイクは上記の換価基準に含まれていませんが、自動車に準じて取り扱われるのが一般的です。
したがって、処分見込額が20万円以下の自動車やバイクは、自己破産しても処分する必要がありません。逆に、20万円を超える場合は,原則どおり,換価処分が必要となります。(*2)
*1 東京地裁において自由財産として認められる財産の基準は「換価基準(自由財産拡張基準)」と呼ばれています。
*2 この換価基準は東京地方裁判所のものですが、他の裁判所においても、これに準じた基準が設けられていることもあります。事前に確認しておいたほうが良いでしょう。
(1)処分見込額の判断
上で書いた通り、東京地裁の換価基準においては、処分見込額が20万円以下の自動車は自由財産として取り扱われるものとされています。
では、この「処分見込額」はどのようにして決めるのでしょうか?
実際のところは、自動車やバイクの買取業者に査定してもらっておくのが一般的です。(*3)
ただし、東京地裁の場合、減価償却期間を経過している自動車やバイクは処分見込額ゼロ円として扱ってよいとされています。(*4)
なお、自動車やバイクの減価償却期間は,以下のとおりです。
普通乗用自動車 6年
軽自動車 4年
バイク(原動機付自転車も含む。) 3年
この減価償却期間を経過している自動車・バイクについては査定が不要ということです。
裁判所に対して減価償却期間を超えていることを申告すれば足ります。
*3 複数社に査定してもらった方がよいでしょう。
*4 その場合には,査定も不要となります。
(2)自動車・バイクが複数台ある場合
前述のとおり、東京地裁の換価基準においては,処分見込額が20万円以下の自動車は自由財産として取り扱われるものとされています。
それでは、自動車やバイクが複数台ある場合、あるいは、自動車とバイクの両方を持っている場合はどうなるのでしょうか?
この場合,処分見込額は1台1台について判断されるのが通常です。
預貯金や解約返戻金のように全部の合計金額で判断されるわけではありません。
例を挙げてみましょう。
A自動車の処分見込額が10万円、B自動車の処分見込額が15万円だったとします。
この場合は、いずれも処分見込額が20万円以下ですから、いずれも処分は不要ということになります。
とは言うものの、自動車は維持費がかかりますので、複数台維持したままというのは、経済的な更生を図ろうとする自己破産の趣旨からすれば、望ましくないと言えます。
このため、最も必要な自動車・バイク以外は処分するよう、裁判所や破産管財人から勧められることはあるかもしれません。
(3)処分見込額が20万円を超える場合
東京地裁の運用であっても、処分見込額が20万円を超える自動車やバイクは処分の対象になります。
もっとも、処分見込額が20万円を超える自動車やバイクについて、裁判所に自由財産の拡張を申立て、それが裁判所によって認められれば、自由財産として処分しなくてもよいことになります。
ただし、換価基準を超える財産の自由財産拡張が認められるためには、かなり高度の必要性が求められます。
単に通勤や送迎に必要であるという程度の理由ではほとんど認められないと考えてください。
高度の必要性がない場合には、自動車やバイクの処分見込額に相当する金額を破産管財人に支払うことにより、自由財産の拡張や破産財団から放棄してもらうという方法をとることになります。
自動車やバイクの処分見込額を支払えるだけの自由財産がある場合には、それを破産管財人に支払うことになります。
場合によっては,親族等の援助によって支払うこともあるでしょう。
いずれにしても、自動車やバイクを換価処分するのと同等の金銭が破産財団に組み入れられるので、この方法による自由財産拡張の申立ては基本的に認められることが多いでしょう。
したがって,どうしても自動車やバイクを残したいという場合には,自動車やバイクの処分見込額を用意できるかが重要となってきます。(*5)
*5 処分見込額を用意することもできない場合には、個人再生や任意整理など自己破産以外の債務整理手続を検討する必要があるでしょう。
・・・以上が「自己破産すると自動車・バイクはどうなるの?(その1)~ ローンが残っていない場合~」についてのご紹介でした。
自動車やバイクは、生活必需品であることが多いのですが、趣味・嗜好品でもあります。
思い入れのある愛車について、処分対象になるのは、断腸の思いをされる方も多いと思います。
ただ、あきらめる前に専門家に相談されることをおススメします。
では、また。