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同時廃止はどのような場合に適用されるのか?~「同時廃止」の適用要件~

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こんにちは。管理人です。

自己破産の手続には、管財事件と同時廃止事件があります。

そのうち、「同時廃止」とは、破産管財人が選任されず、破産手続の開始と同時に破産事件が廃止されることをいいます。

では、どんな場合に「同時廃止」となるのでしょうか?

本稿では「どのような場合に「同時廃止」となるのか?」 言い換えれば「同時廃止の適用要件」についてご紹介します。

同時廃止事件と管財事件

自己破産の手続には、管財事件と同時廃止事件があります。

「管財事件」は、破産手続の原則的な形態であり、裁判所によって破産管財人が選任され、その破産管財人が申立人破産者の財産を調査・管理・換価処分して配当することになります。

管財事件の場合、調査の結果、配当すべき財産がなければ「異時廃止」として破産手続は終了することになります。

一方、「同時廃止」とは、破産管財人が選任されず、破産手続の開始と同時に破産事件が廃止されることをいいます。(*1)

*1 破産手続開始と同時に破産手続が廃止されるため、「同時廃止」と呼ばれています。

同時廃止事件が債務者にとって有利である理由

管財事件の場合、裁判所によって破産管財人が選任され、その破産管財人により財産の調査や管理,換価処分が行われます。

そのため、破産管財人の報酬も含めてそれなりに高額な費用がかかります。

東京地方裁判所などでは、「少額管財」といって、裁判所に納める予納金の金額が少額で済む手続も用意されていますが、それでも,20万円前後の予納金は必要となります。

一方の「同時廃止」の場合には、破産管財人は選任されず、破産手続も開始と同時に終了となります。

したがって、申立てにかかる費用のほかに費用がかかりません。(*2)

また、同時廃止の場合、破産管財人による調査・管理・換価処分などの管財業務も行われませんので、手続終了までの期間も、管財手続よりも短くなります。

そのため、「同時廃止」で済むのか、それとも「管財事件(個人の場合には大半が少額管財)」となるのかは費用や時間の点からみても重要な問題となってきます。(*3)

*2 東京地方裁判所では,1万6000円ほどで済むことになります。

*3 東京以外の裁判所では「同時廃止」の予納金も管財事件とあまり変わらないところもありますので、裁判所に確認することをお勧めします。

同時廃止になる要件

管財事件においては、破産管財人による調査の結果、配当すべき財産がない場合には破産手続が廃止によって終了されます。(*4)

一方、「同時廃止」は、破産手続開始と同時に破産手続が廃止される場合を差し、具体的には「破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるとき」が該当します。

実際には、破産手続には、破産管財人の報酬をはじめとして、様々な費用がかかりますから、費用が用意できなければ手続を進めていくことはできません。

したがって、開始時点で破産手続を進めていくだけの財産すら無いことが明らかである場合には、破産管財人を選任して手続を進めることは不可能ということになります。

そのため、「破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるとき」には同時廃止となるわけです。

*4 破産手続開始と異なる時期に廃止となるため、「異時廃止」と呼ばれています。

破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足することとは?

上述のとおり、同時廃止の法律上の要件は「破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるとき」です。

「破産財団」とは、破産者の財産の総体のことをいいます。

「破産手続の費用を支弁するのに不足する」というのは破産管財人報酬等の予納金を含む破産手続費用を支払うだけの財産がない」ということです。

東京地方裁判所の場合には、少額管財の引継予納金は20万円とされています。

したがって,20万円を支払うだけの財産がないという場合には、この「破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すること」に当たるということになります。(*5)

また、この20万円には自由財産は含まれません。

したがって、自由財産と認められる財産のうちに20万円以上の財産があっても,それはカウントされないので、「破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すること」に当たると判断されることがあります。

ただし,現金だけは別です。

99万円以下の現金は法律上自由財産とされていますが、実際に保有している現金が33万円以上ある場合には、原則として、破産手続費用を支払うことができるものとして扱われ,同時廃止にはならないとされています。

*5 この判断の基準を「20万円基準」と呼ぶことがあります。

同時廃止と免責不許可事由の関係

前述のとおり、同時廃止になるのは「破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるとき」です。

しかしながら、「免責不許可事由」がある場合には、裁量免責をしてよいかどうかを判断する必要がありますが、その前提として、破産管財人による免責に関する調査が必要になってきます。

そのため,明確な法律上の条文はないのですが、免責不許可事由があると疑われる場合や免責不許可事由の調査が不十分な場合、そして免責不許可事由がある場合には、「管財事件(少額管財事件)」になる場合があります。

>同時廃止となるかどうかの判断における実際の運用

同時廃止の手続では破産管財人が選任されません。

そのため、財産や免責不許可事由(または裁量免責の可否)の調査が十分になされないおそれがあります。

また、費用の安い同時廃止とするために、申立ての段階で、財産や免責不許可事由を申告しないなどの不正な申立てがなされる可能性も考えられます。

そこで,東京地方裁判所などでは「同時廃止とするかどうかの判断」は、かなり慎重なものとなっています。

具体的に言うと、「破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すること」の判断については、申立書の記載等から、明らかな場合でなければなりません。

財産があると疑われる場合や資産調査が不十分な場合には、破産管財人の調査を要するとして、「管財事件(少額管財事件)」となる場合があります。

以上から実際には、同時廃止となるのは,以下の2つの要素を満たす場合となります。

  1. 破産手続費用を支弁するだけの財産(東京地裁の場合には自由財産を除く20万円以上の財産。ただし,現金だけは33万円以上)がないことが明らかな場合
  2. 免責不許可事由がないことが明らかな場合

ただし、管財手続になる場合であっても,東京地方裁判所などでは、引継予納金の金額が少額で済む「少額管財」になるのが通常です。

・・・以上が「同時廃止はどのような場合に適用されるのか?」についてのご紹介でした、

実際のところ、同時廃止となるかどうかの判断は,実際には微妙であるというケースも少なくないですので,専門家である弁護士・司法書士にご相談されることをお勧めいたします。

では、また。