自己破産すると手持ち現金はどうなるの?~自己破産における財産処分(その1)~
借金地獄からに脱却における必殺技、「自己破産」。
借金をチャラにしてもらう(=免責を受ける)ために、「自由財産」を除く保有資産を差し押さえられることになります。
今回からはその「財産処分」について、一つずつ見ていきましょう。
まずは「手持ちの現金はどうなるの?」についてです。
「現金」とは何か?
まず、前提を確認しておきましょう。
ここで云う「現金」とは、手持ちのお金のことを指しています。
「預金」や「貯金」は、銀行等から引き出せばすぐに現金化できます。
しかし、法的に見ると、あくまで銀行等に対する「預貯金払戻請求権」という債権となります。
つまり、本稿でいう「現金」には含まれないということに、注意してください。
自由財産となる現金
破産法では、「民事執行法第131条第3号 に規定する額に2分の3を乗じた額の金銭」は自由財産となるとしています。
そして「民事執行法第131条第3号に規定する金銭」とは「標準的な世帯の2月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭」とされています。
つまり、これに2分の3を乗じた額の金銭は自由財産となる、というわけです。
では、「標準的な世帯の2月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭」とは、どのくらういでしょうか?
実は、この金額は政令(民事執行施行令)によって定められています。
この民事執行施行令では「標準的な世帯の2月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭」とは「66万円の現金」であるとしています。
上記の通りでいうと、破産法において自由財産となる現金は、上記66万円に2分の3を乗じた現金、すなわち、「99万円の現金」ということになります。
ゆえに、自己破産しても,99万円以下の現金は自由財産となり、破産者が持っていて良いということになります。
自己破産における現金の取扱い
上記の通り、破産法では現金のうち99万円までは自由財産となりますので、破産財団の対象外として自由に使ってよいということになります。
一方で、99万円を超える現金を持っている場合はどうなるのでしょう?
この場合には、99万円を超える部分は破産財団に組み入れられます。
よって、破産管財人に引き継ぐことになります。
例えば、100万円の現金を持っている場合には99万円までは破産者が持っていてもよいのですが、1万円は破産管財人に引き渡して、配当にまわしてもらうということになるのです。
現金の所持と同時廃止の関係
上記のとおり、99万円以下の現金は自由財産となるので、破産手続開始時に99万円以下の現金を持っていた場合、換価すべき財産はなく、同時廃止となるように考えることもできます。
しかしながら、残念ながら、そううまくはいきません。
東京地裁の場合、33万円以上の現金がある場合には管財事件(通常は少額管財)となるという運用になっています。
これも例を挙げてみましょう。
申立人が現金99万円を持っていたとします。(ほかの財産は無いものとします)
この99万円の現金は自由財産となります。
ただし、手続としては少額管財となるため、引継予納金として20万円を支払うことになります。
したがって、結局のところ、自己破産した場合に持っていられる現金は、79万円ということになります。
では、200万円の現金を持っていた場合はどうなるでしょうか?(こちらもその他の財産は無いものとします)
この場合は、自由財産となるのは99万円だけですから、残りの101万円は破産財団に組み入れることになります。
もっとも、引継予納金については、この101万円に含まれていると考えるのが通常でしょう。
・・・以上が「自己破産における手持ち現金の取り扱い」についてでした。
自己破産しても、できるだけ現金を手元に置いておきたい、と考えるのが人情です。
しかしながら、その気持ちが強まって「隠し財産」のような形で現金を隠しておけば、これは「免責不許可事由」とみなされかねませんので、注意が必要です。
やはり、自己破産を視野に入れる場合は、専門家にしっかり相談されるべきと管理人は考えます。
では、また。