「個人再生」における申立人と裁判所双方のサポート役~「個人再生委員」って何だろう?
個人再生には「給与所得者等再生」と「小規模個人再生」という異なる整理方法がありますが、双方とも裁判所を介して実施します。そして、「個人再生」の手続において、以下のような役割を果たすために裁判所が指定する人がいます。
- 債務者の財産・収入の状況の調査
- 再生債権の評価に関し裁判所の補助
- 再生債務者が適正な再生計画案を作成するための必要な勧告
この人たちを「個人再生委員」と言います。
今回は「個人再生委員」についてご紹介します。
個人再生委員とは?~「民事再生」における「監督委員」の個人版~
個人再生の手続で、もう一つの「法的整理」である「自己破産」と異なる点は「申立者(債務者)」が自ら、債権者と交渉し、再生計画案を立てるなどの手続を行っていかなければならないという点です。
しかし「申立者(債務者)」が自ら独力で手続きを行うのは困難な場合がありますし、一方で不正等により債権者の公平を害するという危険性もないとは言えません。
その点を踏まえると、第三者的な見地から「再生計画」作成を含む「個人再生」手続きについて、「債務者」への指導や監督が必要となってきます。
もちろん、「個人再生」の手続き自体は、裁判所が監督することになるのは言うまでもないことですが、「個人再生」の手続きについて問題ないように進め、一つ一つ確認していくためには、「債務者」にマン・ツー・マンの形で指導監督を行うのが望ましいと言えます。
以上から「個人再生」の手続きにおいて、裁判所が「個人再生委員」を選任し、その個人再生委員が個々の個人再生手続について指導監督させることができるものとされています。
個人再生委員の選任とは?
上述の通り、裁判所は「個人再生」の手続きについて指導監督をさせるために「個人再生委員」を選任できますが、選任するかどうかは、個々の申立事案に応じて裁判所が決定しています。
すなわち、個人再生手続を進めるにあたって個人再生委員を選任せずに行うケースもあるということです。
・・・そうは言うものの、「個人再生委員」を選任し、手続きを客観的に確認することで、より的確に進めていけることが確かであることも事実です。
そのため、東京地方裁判所では全件につき個人再生委員が選任されるという運用を原則としています。
なお、個人再生委員は弁護士等の「個人再生手続き」に精通した者が選任されることになります。資格要件としては実質的に「弁護士」であるようで、弁護士以外の者が選ばれたという例は皆無となっているようです。
東京地方裁判所本庁では選任基準を以下のように定めて運用しています。
- 23区内に所在する法律事務所に所属する弁護士であること
- 1のうちで個人再生手続の申立てや破産管財人等の経験が多いこと
- 1,2のうちで弁護士登録10年以上の弁護士であること
もともと「個人再生」は民事再生手続の個人版ですが、本家(?)の「民事再生手続き」においても、裁判所が選任した「監督委員」が再生手続を指導監督しています。
ですので、「個人再生委員」は「監督委員」の個人版ということです。(その役割は次回に書きます。)
・・・以上が「個人再生委員」のご紹介でした。「個人再生委員」は他の整理方法とは異なり、「個人再生」特有のものです。その立ち位置は、申立人(債務者)および裁判所双方のサポート役と言えるでしょう。