弁護士や司法書士が送付する「受任通知書」って何?
こんにちは、レディックです。
裁判所を介さずに債権者である貸金業者などと「将来利息」や「延滞損害金」などの免除を求めて交渉する、「任意整理」は債務整理の中で最も利用されている方法です。
任意整理に関係する情報は数多くの人が目の当たりにするようになり、将来利息を0円にしてもらったり、返済期間を交渉して月々の負担額を減額してもらったりというメリットは以前より知られるようになりました。
さて、任意整理をする場合にほとんどの人が弁護士や司法書士に依頼をし、さまざまな手続きや債権者との交渉を代理で行ってもらう委任契約を結ぶと、弁護士・司法書士は各債権者に「受任通知」を送付します。
この「受任通知」を受けると債権者は債務者に対して取立てや督促などができなくなります。
「受任通知」という言葉を目にすることは、ままあるとは思いますが、その内容をしっかりと理解しておく必要があります。
・・・というわけで今回は「任意整理と受任通知」についてご紹介します。
1.任意整理とは?
「任意幣理」とは、債権者と将来利息のカットや長期分割弁済などの返済の方法や返済の額について交渉をして、支払いが可能になるような(今よりも良い)条件での合意を成立させる手続きです。
すべての債務整理の手続きの中で、最もよく利用されるのが、この任意整理の手続きですが、裁判所への申立の必要はなく、自分一人でも行うことができます。
これは他の信務整理が裁判所を介する法的措置*1であるのに対して、任意整理は債権者と債務者との「私的交渉」という位置づけなります。また、裁判所は関与しませんので、自己破産や個人再生の場合のように、裁判所に提出する書類を用意する必要はありません。
「利息制限法」の上限利率を超える利息の契約がある場合には、利息制限法による引き直し計算を行い、過去に払い過ぎている利息を元本に充当して債務を減らします。*2
そして、将来の利息はカットして長期分割払いをするという交渉や、一括返済するので債務を減額して欲しいというような交渉をしていきます。
なお、「任意整理は私的交渉ですので、自分一人で行うことができる」と書きましたが、債権者相手の交渉については、素人にはハードルが高く、専門家(弁護士や司法書士)に依頼するほうが良いでしょう。
2.受任通知って何だろう?
任意整理を含む債務整理を行う場合、弁護士や司法書士から各債権者に宛てて「受任通知」を送付するのが通常です。「受任通知」とは、弁護士や司法書士が債務者の代理人として債務整理手続を行うことを消費者金融や貸金業者、カード会社などの各債権者に知らせる通知です。*3
3.「受任通知」を送るとどうなるの?
上述のとおり、「受任通知(介入通知)」は,弁護士や司法書士が債務者の方の代理人となったことを債権者に知らせるというものですが、ただそれだけの通知ではありません。
直接の取立てや督促の停止
貸金業者や債権回収会社は、この受任通知を受理すると,以降、直接の取立てができなくなるという法的な効果を生じます。これは貸金業法や債権管理回収業に関する特別措置法によって定められており、受任通知を受理した後は,貸金業者から直接電話がかかってきたり,FAXや郵便が送られてきたり,担当者が家に押しかけてきたりということがなくなります。
この受任通知送付による貸金業者や債権回収会社からの取立て停止によって,債務者の方の生活が暫定的にではありますが安定し,債務整理の準備を進めることができるようになります。*4
取立てが停止するのはなぜなのか?(=法的根拠)
受任通知の送付によって,貸金業者や債権回収会社(サービサー)などによる直接の取立てが停止するのは,事実上の効果にすぎないというわけではありません。貸金業者や債権回収会社からの直接の取立てが停止するのは,法律で認められたものです。
貸金業法21条1項は,以下のとおり,貸金業者による取立て行為の制限を定めています。
【貸金業法第21条第1項】
”貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は,貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たつて,人を威迫し,又は次に掲げる言動その他の人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない。“
なお、受任通知については「貸金業法21条1項9号」により言及しています。
【貸金業法21条1項9号】
”債務者等が,貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士若しくは弁護士法人若しくは司法書士若しくは司法書士法人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し,又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとり,弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知*5があつた場合において,正当な理由がないのに,債務者等に対し,電話をかけ,電報を送達し,若しくはファクシミリ装置を用いて送信し,又は訪問する方法により,当該債務を弁済することを要求し,これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず,更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求すること。”
また、債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)18条も,債権回収会社による取立て等の業務を制限しています。貸金業法においては,受任通知受領後,貸金業者は,電話・電報・FAX・訪問などの方法で債務者に対して直接の取立てをすることを禁止し,サービサー法では,訪問・電話による直接の取立てを禁止しています。*6
受任通知による取立て禁止に関する罰則規定とは?
受任通知後の取立てを禁止する規定について、これを破った場合の制裁について補足しておきましょう。
貸金業法47条の3第3号では,前記第21条第1項の規定に違反した場合には,2年以下の懲役,300万円以下の罰金,あるいは,その両方の刑罰を科すものと定めており,さらに,業務停止や貸金業登録取消しなどの行政処分の対象となる場合もあります。
サービサーの場合も同様に,債権回収会社の許可の取消し等の行政処分を受ける場合があります。ただし,貸金業者や債権回収会社等以外の債権者については,法的に直接の取立てが禁止されているわけではありません。もっとも,現実的には,弁護士がその債権者に受任通知を送付すると,直接の取立てを停止してくれることが大半です。
受任通知の効力の注意点を押さえておこう!
受任通知の効果については注意点があります。
まず,取り立て停止の法的な効果が生ずるのは貸金業者や債権回収会社(サービサー)などだけで,買掛先など一般の債権者に対しては効力を有しません。
もっとも、弁護士から受任通知が送付されると、大体の債権者はとりあえず直接の取立ては停止してくれます。特に,銀行やリース会社などの金融機関は,取立てを停止してくれるのが通常です。
また、直接の取立てが停止されるだけですので,貸金業者や債権回収会社であっても,訴訟などの裁判手続によって貸金の返還を請求することまでは停止できません。
なお、この点についても受任通知送付後一定期間は裁判などを起こすことも停止してくれるのが通常です。
4.受任通知の記載内容
受任通知書には一定の書式があります。
まずは、依頼者の氏名や住所、代理人に選任された司法書士の氏名や事務所の名称を記載します。
本文には、受任した旨の記載、依頼主への連絡および取立行為の禁止や負債状況把握のための開示依頼、調査時の電話等問い合わせの拒否など、必要な事項を明記します。
この受任通知を用いて、金融機関側と交渉するために督促を一旦停止することを要求するのです。
・・・以上が「任意整理と受任通知」についてのご紹介でした。
いずれにしても、借金問題は時間との戦いです。
まずは、1日でも早く弁護士や認定司法書士に相談を行い、新しい人生の第一歩を踏み出してください。
この記事が借金生活でお悩みの方々にご参考となれば幸いです。
では、また。