借金生活リセット倶楽部

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自己破産すると自動車・バイクはどうなるの?①~自己破産における財産処分(その7)~

こんにちは。管理人です。

借金地獄からに脱却における必殺技、「自己破産」。

自己破産をした場合には、借金をチャラにしてもらう(=免責を受ける)ために、「自由財産」を除く保有資産を差し押さえられることになります。

その「財産処分」について、一つずつ見ていきましょう。

今回は「自己破産すると自動車・バイクはどうなるの?(その1)」についてです。

自己破産における自動車・バイクなどの取扱いの原則

自己破産した場合に自動車やバイクはどうなるのか?という疑問をお持ちの方は非常に多いようです。

一般的に、自己破産すると、自動車やバイクを処分しなければならなくなるのが、原則です。

ただし、常に処分されるというわけではありません。

例外的に自動車やバイクを処分しなくて済むこともあります。

では、どのような場合に自動車やバイクを失うことになり、どのような場合に残すことができることになるのでしょうか?

まず、その自動車やバイクの購入ローンが残っているのかどうかを確認する必要があります。

以下、ローンの残っていない場合とローンの残っている場合とに分けて、見ていきましょう。(今回は「ローンの残っていない場合」についてご紹介します)

ローンの残っていない自動車・バイク

自己破産をすると、「自由財産」に該当する財産を除いて、財産の換価処分が必要となりますが、自動車やバイクは原則として、自由財産に該当しません。

さらに、ローンの残っていない自動車やバイクは純粋に資産・財産となります。

ですから、自由財産に該当しない以上は、所有している自動車やバイクは換価処分しなければならないのが原則、というわけです。

もっとも、東京地裁では、破産者の経済的更生を図ることを目的として、破産法に定められているものよりも自由財産として認められる財産の範囲を拡大する運用を採用しています。(*1)

この東京地裁の基準においては、処分見込額が20万円以下の自動車は、自由財産の拡張によって自由財産として取り扱われるものとされています。

バイクは上記の換価基準に含まれていませんが、自動車に準じて取り扱われるのが一般的です。

したがって、処分見込額が20万円以下の自動車やバイクは、自己破産しても処分する必要がありません。逆に、20万円を超える場合は,原則どおり,換価処分が必要となります。(*2)

*1 東京地裁において自由財産として認められる財産の基準は「換価基準(自由財産拡張基準)」と呼ばれています。

*2 この換価基準は東京地方裁判所のものですが、他の裁判所においても、これに準じた基準が設けられていることもあります。事前に確認しておいたほうが良いでしょう。

(1)処分見込額の判断

上で書いた通り、東京地裁の換価基準においては、処分見込額が20万円以下の自動車は自由財産として取り扱われるものとされています。

では、この「処分見込額」はどのようにして決めるのでしょうか?

実際のところは、自動車やバイクの買取業者に査定してもらっておくのが一般的です。(*3)

ただし、東京地裁の場合、減価償却期間を経過している自動車やバイクは処分見込額ゼロ円として扱ってよいとされています。(*4)

なお、自動車やバイクの減価償却期間は,以下のとおりです。

普通乗用自動車 6年

軽自動車 4年

バイク(原動機付自転車も含む。) 3年

この減価償却期間を経過している自動車・バイクについては査定が不要ということです。

裁判所に対して減価償却期間を超えていることを申告すれば足ります。

*3 複数社に査定してもらった方がよいでしょう。

*4 その場合には,査定も不要となります。

(2)自動車・バイクが複数台ある場合

前述のとおり、東京地裁の換価基準においては,処分見込額が20万円以下の自動車は自由財産として取り扱われるものとされています。

それでは、自動車やバイクが複数台ある場合、あるいは、自動車とバイクの両方を持っている場合はどうなるのでしょうか?

この場合,処分見込額は1台1台について判断されるのが通常です。

預貯金や解約返戻金のように全部の合計金額で判断されるわけではありません。

例を挙げてみましょう。

A自動車の処分見込額が10万円、B自動車の処分見込額が15万円だったとします。

この場合は、いずれも処分見込額が20万円以下ですから、いずれも処分は不要ということになります。

とは言うものの、自動車は維持費がかかりますので、複数台維持したままというのは、経済的な更生を図ろうとする自己破産の趣旨からすれば、望ましくないと言えます。

このため、最も必要な自動車・バイク以外は処分するよう、裁判所や破産管財人から勧められることはあるかもしれません。

(3)処分見込額が20万円を超える場合

東京地裁の運用であっても、処分見込額が20万円を超える自動車やバイクは処分の対象になります。

もっとも、処分見込額が20万円を超える自動車やバイクについて、裁判所に自由財産の拡張を申立て、それが裁判所によって認められれば、自由財産として処分しなくてもよいことになります。

ただし、換価基準を超える財産の自由財産拡張が認められるためには、かなり高度の必要性が求められます。

単に通勤や送迎に必要であるという程度の理由ではほとんど認められないと考えてください。

高度の必要性がない場合には、自動車やバイクの処分見込額に相当する金額を破産管財人に支払うことにより、自由財産の拡張や破産財団から放棄してもらうという方法をとることになります。

自動車やバイクの処分見込額を支払えるだけの自由財産がある場合には、それを破産管財人に支払うことになります。

場合によっては,親族等の援助によって支払うこともあるでしょう。

いずれにしても、自動車やバイクを換価処分するのと同等の金銭が破産財団に組み入れられるので、この方法による自由財産拡張の申立ては基本的に認められることが多いでしょう。

したがって,どうしても自動車やバイクを残したいという場合には,自動車やバイクの処分見込額を用意できるかが重要となってきます。(*5)

*5 処分見込額を用意することもできない場合には、個人再生や任意整理など自己破産以外の債務整理手続を検討する必要があるでしょう。

・・・以上が「自己破産すると自動車・バイクはどうなるの?(その1)~ ローンが残っていない場合~」についてのご紹介でした。

自動車やバイクは、生活必需品であることが多いのですが、趣味・嗜好品でもあります。

思い入れのある愛車について、処分対象になるのは、断腸の思いをされる方も多いと思います。

ただ、あきらめる前に専門家に相談されることをおススメします。

では、また。

自己破産すると退職金はどうなるのか?~自己破産における財産処分(その6)~

こんにちは。管理人です。

借金地獄からに脱却における必殺技、「自己破産」。

自己破産をした場合には、借金をチャラにしてもらう(=免責を受ける)ために、「自由財産」を除く保有資産を差し押さえられることになります。

その「財産処分」について、一つずつ見ていきましょう。

今回は「勤務先からの退職金はどうなるの?」についてです。

すでに受領している退職金の取扱い

勤務先を退職し、すでに退職金が支払われている場合は、その金銭が現金として保管されているのであれば現金として扱われ、預金・貯金口座に入っているのであれば預金・貯金として扱われることになります。

したがって、原則として、その金銭の由来が退職金であったかどうかではなく、現金または預貯金として換価処分すべきかどうかが決められることになります。

まだ受領していない退職金の請求権の取扱い

一方で、退職はしたものの、まだ退職金を受け取っていない場合、あるいは、まだ退職さえしていないという場合はどうなるのでしょうか。

実は、この場合では、もらえるであろう退職金を請求することができる債権が財産として扱われます。(*1)

そして、この退職金債権は、その4分の3が差押禁止債権となりますが、残りの4分の1は差押えが可能です。

このため、退職金債権の4分の3は破産手続上も自由財産となりますが、残りの4分の1は自由財産とはならず、換価処分の対象となるのが原則です。

要するに、破産法の建前でいくと、破産手続開始決定の時点で退職したならばもらえるであろう退職金のうちの4分の1は換価処分できることになります。

ただし、この退職金の金額は、あくまで破産手続開始時点で退職したらいくらもらえるのかということが基準です。(*2)

以上から、「退職金債権を換価処分する」とは破産管財人が勤務先の会社から退職金債権の4分の1を取り立てる」ということを指しています。

そうは言っても、退職金を回収するためには、その勤務先を退職するか、または退職金の前払いをしてもらわないといけないということになります。

そうすると、破産者に会社を退職してもらうか、または、破産管財人が会社に対して退職金の4分の1の前払いを請求するということになります。

しかし、勤務先を退職すると破産者は収入を失いますし、また破産管財人が勤務先に請求すると、破産したことが会社に知られてしまい、後々の勤務に悪影響を及ぼすおそれがないとも言えません。

そこで、破産者が破産管財人に対して退職金支給見込額の4分の1に相当する金銭を支払う代わりに、退職金債権を破産財団から放棄(または実施的に回収が完了した形に)してもらうという取扱いをするのが通常となっています。

前述のとおり、退職金債権のうち4分の1は財産換価処分の対象となりますが、現実問題として、退職金自体、かなり高額となることが多いため、その4分の1を代わりに破産者が積立てるといっても、たやすいことではありません。

退職金の4分の1だけを積立てて自己破産すれば将来全額もらえるのだから不都合はないとも考えることもできまますが、実際のところ、将来、退職するときに退職金が支払われるのか、さらに言えば、勤務先自体が存続しているのかすら分かりません。(*3)

したがって、4分の1は換価対象であるという原則を厳格に適用しすぎると、退職金がある人は自己破産することが難しくなってしまうということになってしまいかねません。

そこで、東京地方裁判所では、財産換価(自由財産拡張)基準を設けており、退職金債権については、自由財産となる範囲を拡大する運用をしています。

もっとも、どのようなケースでも自由財産拡張が認められるわけではありません。

では、次に自由財産拡張が認められるケースについて見ていきましょう。

*1 もちろん、勤務先に退職金制度があることが前提です。(無い場合は問題になりません)

*2 将来定年退職した場合というわけではありません。

*3 一概に退職金を将来もらえるからよいと考えることもできません。

退職金について自由財産拡張をどのように判断するのか?

(1)すでに退職しているが退職金を受け取っていない場合

すでに退職しているが退職金を受け取っていない場合、今後退職金を受け取ることができるのは、ほぼ確実と言えます。

そのため、この場合は、自由財産の拡張はされません。破産法の原則どおり、退職金債権の4分の1が換価処分の対象となります。

(2)まだ退職していないが、破産手続中に退職することが決まっている場合

まだ退職していないが、破産手続中に退職することが決まっている場合も退職金を受け取ることができるのは、ほぼ確実です。

したがって、この場合も、すでに退職している場合と同様に自由財産の拡張はなされず、退職金債権の4分の1が換価処分の対象となるとされています。

(3)まだ退職をしていない、かつ、破産手続中に退職する見込みもない場合

この場合、確かに将来退職金をもらえる見込みがあるとはいっても、現実に退職金が手元に入ってくるのはまだまだ先の話です。

しかも、いざ将来退職するというときには、本当に退職金がもらえるのかどうかは未知数です。

この場合、そのような不確定な要素があるにもかかわらず、退職金債権の4分の1を換価処分できるとすると、破産者に不当な負担を与えてしまう可能性もあります。

そのため、東京地裁では、財産換価(自由財産拡張)基準によって、退職金支給見込額の8分の7を自由財産とするという運用をしています。

つまり、換価処分が必要な範囲は、退職金債権の8分の1だけで済むということです。

さらに、この8分の1の金額が20万円に満たない場合には、退職金債権全額を自由財産とするという運用をしています。

分かりやすく言えば、換価処分されるのは退職金支給見込額が160万円以上の場合だけであり、しかも,その8分の1だけ換価処分すればよいということです。

退職金請求権と同時廃止の関係

自己破産の申立てについて「同時廃止」となるのは、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときです。

したがって、退職金債権の8分の1と他の財産の合計が破産手続費用を支払うのに足りない場合には、同時廃止となります。

さらに、東京地裁の運用では、「破産手続開始時に退職しておらず、かつ、破産手続中に退職する見込みがない場合は退職金債権について自由財産の拡張を行うという取扱いがなされています。

具体的には、退職金債権の8分の1が20万円未満の場合には、退職金債権全額について自由財産となりますから、退職金債権は考慮されず、その他の財産で破産手続費用を支払うのに不足するのであれば、同時廃止となります。

例を挙げてみましょう。

申立人が破産手続開始時にまだ退職しておらず、退職する予定もないという場合で、80万円の退職金支給見込があり,これに加えて15万円の財産を持っていたとします。(他の財産・免責不許可事由は無いものとします)

このケースでは破産法の原則だと、退職金債権の4分の1の20万円と15万円の財産の合計35万円の財産があることになるので、同時廃止とはならないことになります。

ところが、東京地裁の運用では、退職金債権の8分の1が20万円未満の場合には退職金債権全額が自由財産となり、破産財団に組み入れられませんから、破産財団としては退職金債権以外の財産10万円しか無いということになります。

したがって、20万円の破産手続費用を支払うだけの財産が無いということになるので「同時廃止」となります。(*4)

*4 あくまで東京地裁の「運用」です。場合によっては、財産が25万円あると判断され「少額管財」となることもあり得ます。

・・・以上が「自己破産における退職金の取扱い」に関する、ご紹介でした。

サラリーマンにとって「退職金」は大きな財産です。

自己破産をご検討されている場合は、この点について十分に理解されるよう、専門家(弁護士・司法書士)へ相談されることをおススメします。

では、また。

自己破産すると借りている部屋の敷金はどうなるの?~自己破産における財産処分(その5)~

こんにちは。管理人です。

 

借金地獄からに脱却における必殺技、「自己破産」。

 

自己破産をした場合には、借金をチャラにしてもらう(=免責を受ける)ために、「自由財産」を除く保有資産を差し押さえられることになります。

 

その「財産処分」について、一つずつ見ていきましょう。

 

今回は「借りている家の敷金はどうなるの?」についてです。

 

自己破産における敷金返還請求権の取扱いとは?

 

家・部屋を借りるときには、一般的に「敷金」(*1)を事前に差し入れることになっています。

 

この「敷金」は、契約終了後、家や部屋を出て、大家さんに返す際に、未払いの家賃や部屋のクリーニング代等を差し引いた上で、返還されます。

 

この敷金を返してもらう請求権のことを「敷金返還請求権(敷金債権)」といいます。

敷金が返ってくるのは、賃貸借契約が終了し、目的物を明け渡したときであるとされていますので、上記の敷金返還請求権が発生するのは、そのタイミングということになります。

 

要するに、「敷金返還請求権」は、賃貸契約期間中は発生していないということになりますから、この賃貸契約期間中に破産した場合は、破産手続開始決定の時点では、「敷金返還請求権」は発生していません。

 

ところが、「敷金返還請求権」は、敷金を差し入れている限り、将来のどこかのタイミングで、いつかは発生します。(*2)

 

つまり、「敷金返還請求権」は「将来の請求権」です。

 

さらに、この将来の請求権は、破産財団に組み入れられることになっています。

また、「敷金返還請求権」は差押禁止債権ではありませんので、自由財産にはなりません。

 

したがって、自己破産すると「敷金」は換価処分の対象としなければならないのが原則ということになります。

 

*1 保証金と呼ばれる場合もあります。

*2 敷金から、いくら差し引かれるかは、また後の問題となります。

 

敷金返還請求権の換価処分とはどういうことか

「敷金返還請求権を換価処分する」とはどういうことでしょうか?

 

これを端的に言うと、破産管財人が家や部屋の賃貸借契約を解除して、その家や部屋を賃貸人・大家に明け渡し、敷金を回収して破産財団に組み入れる」ということを意味します。

 

破産法上では、破産管財人には賃貸借契約を解除する権限が与えられています。

したがって、敷金返還請求権を換価処分するためには、、以下の二つから選択することになります。

 

すなわち、

 

① 破産者が自分で賃貸借契約を解除する

② 破産管財人が賃貸借契約を解除して不動産の明渡しをした上で、敷金を回収する

 

ただし、実際のところは「居住用不動産」については、賃貸借契約を解除されないのが基本ということになります。

 

これはどういうことなんでしょうか?

「敷金返還請求権(敷金債権)」は,換価処分が原則です。

 

しかし、そのために家や部屋の賃貸借契約を解約されてしまうと、破産者が住む場所を失ってしまいます。

 

そうなると、経済的更生を害するおそれがあります。

 

そこで、東京地方裁判所では、換価(自由財産拡張)基準によって、居住用の不動産の敷金債権(敷金返還請求権)については、自由財産として取り扱われるという運用をとっています。

 

つまり、以下の通りとなります。(*3)

 

① 居住用不動産の敷金返還請求権は,自己破産をしても換価処分する必要がない

② 自己破産しても賃貸借契約を解除して明け渡しをする必要もない

 

ちなみに上記に関しては、20万円未満の場合だけ自由財産拡張がなされるというような条件は付けられていません。(*4)

 

*3 あくまで「居住用の不動産」についてです。事業用の不動産などについては、賃貸借契約が解約され敷金の回収が図られるのが通常です。

*4 全額について自由財産の拡張が認められます。

 

敷金返還請求権と同時廃止の関係

 

繰り返しになりますが、同時廃止となるのは、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときです。

 

したがって、「敷金返還請求権(敷金債権)」と他の財産を併せても、破産手続費用を支払うのに足りない場合には。同時廃止となります。

 

さらに、前述のとおり、東京地裁では、「居住用不動産」の敷金返還請求権は自由財産として扱われますから、破産財団に組み入れられないことになります。

 

そのため、居住用不動産の敷金返還請求権の価額は考慮されず、その他の財産で破産手続費用を支払うのに不足するのであれば、同時廃止となります。

 
例を挙げてみましょう。

 

申立者が破産手続開始時に①返金見込額が15万円の居住用不動産の敷金返還請求権、②10万円の財産を持っていたとします。(他の財産・免責不許可事由は無いものとします)

 

このケースでは、破産法の原則でいくと、①と②の合計で25万円の財産があることになるので、同時廃止とはなりません。

 

しかしながら、東京地裁の基準で判断すると、居住用不動産の敷金返還請求権は自由財産となり、破産財団に組み入れられませんから、破産財団としては敷金返還請求権を除いた10万円しか無いということになります。

 

以上から、20万円の破産手続費用を支払うだけの財産が無いということになるので、同時廃止となります。(*4)

 

なお、事業用など居住用ではない賃借物件があり、敷金返還の見込みがある場合には、基本的に少額管財事件となるでしょう。

 

*4 これはあくまで東京地裁の「運用」です。場合によっては,財産が25万円あると判断され、少額管財となることもあり得ます。
 
・・・以上が「自己破産すると借りている部屋の敷金はどうなる?」についてのご紹介でした。
 
自己破産をすると住むところがなくなってしまうのでは?と考える方々も多いようですが、ご紹介のとおり、そういうことはありません。
 
本稿が自己破産を視野に入れている方々にとって、ご参考となれば幸いです。
 
では、また。
 

自己破産すると給料やボーナスはどうなるの?~自己破産における財産処分(その4)~

こんにちは。管理人です。

借金地獄からに脱却における必殺技、「自己破産」。

自己破産をした場合には、借金をチャラにしてもらう(=免責を受ける)ために、「自由財産」を除く保有資産を差し押さえられることになります。

その「財産処分」について、一つずつ見ていきましょう。

 

今回は「給料やボーナスはどうなるの?」についてです。

 

すでに受領している給与・ボーナスの取扱い

 

勤務先から給料・ボーナスなどがすでに支払われている場合、その金銭が現金として保管されているのであれば「現金」として、預金・貯金口座に入っているのであれば「預金・貯金」として扱われます。

 

したがって、その金銭の出どころが給料等であったかどうかということには関係なく、現金または預貯金として換価処分すべきか否かが決められることになります。

 

ただし、特に給料の場合は、最低限度の生活のために必要になるという場合が少なくありません。

 

これを全部処分しなければならないとすると、生活自体ができなくなり、破産者の経済的更生を妨げる可能性がでてきます。

 

そこで、例えば、破産手続開始の直前に給料が預金口座に振り込まれた結果、預金残高が20万円以上となってしまったという場合を想定してみましょう。

 

この場合は、東京地裁の運用であっても、20万円以上の預金は換価処分対象となるのが原則です。

 

しかしながら、預金の内容が生活に必須である給料であるという点を考慮して、さらに自由財産の拡張を認めてくれるという場合があります。

 

まだ受領していない給料・ボーナス請求権の取扱い

 

破産手続開始の時点で、まだ支払われていない給料・ボーナスがあるという場合は法的に言うと、給料・賞与・ボーナスを請求できる債権があるということになります。

 

この給料等の請求権も債権という財産です。

 

(1)給料・ボーナス請求権の取扱いの原則

 

この給料等の債権は、そのうちの4分の3は差押禁止債権となりますが、残りの4分の1は差押えが可能な財産とされています。(*1)

 

したがって、給料債権の4分の3は自由財産となり処分不要ですが、残りの4分の1の部分(*2)は自由財産とはならず、換価処分しなければならないのが原則です。

 

ただし、処分の対象となるのは、「破産手続開始決定の時点で発生している給料・ボーナスの請求債権」だけです。

 

そうでない給料等の債権はそもそも換価処分の対象にはなりません。

 

例を挙げてみましょう。

 

申立人は月給制で、9月25日に次の給料である20万円が入ってくるとして、9月20日に破産手続が開始したとします。

 

この場合、破産手続開始決定時点で1月25日に20万円の給料をもらえる債権があるということになりますから、20万円の4分の1である5万円だけが換価処分の対象となるということです。

 

翌月の10月25日分などは換価対象とはなりません。

 

*1 給与等の金額が33万円を超える場合には、その給与等の金額から33万円を差し引いた金額全額を差し押さえることができる場合があります。

*2 給与等の額が33万円を超える場合には、4分の1の金額または給与等の金額から33万円を差し引いた金額全額のどちらか大きい金額

 

(2)実務上の取扱い

 

給料・ボーナス等の債権の4分の1相当部分については、東京地方裁判所の財産換価(自由財産拡張)基準でも触れられていません。

 

つまり、自由財産が拡張されるわけではないということです。

 

しかしながら、給料は生活の糧です。

 

例え4分の1の金額であっても、処分対象にになると生活が立ち行かなくなるおそれがあります。

 

そのため、給料債権はほとんど換価処分の対象となっていません。

 

つまり、事実上,自由財産が拡張されているのと同じような扱いになっています。

 

したがって、破産管財人が給料債権の4分の1相当部分を取り立てたりすることはありませんし、4分の1相当金額を納めるように請求してきたりはしません。(*3)

 

また、ボーナスの場合は、最低限度の生活の糧とまでいえないことになっており、その請求権については、4分の1が換価対象となることはありえます。

 

なお,賃金でない収入,具体的には「報酬」などは別です。

 

これは全額換価対象となるのが原則です。(*4)

 

*3 ただし、給与金額が相当高額である場合には換価対象となることもあり得ます。

*4 ただし,実質的には給料と同様であるという場合には、給料に準じて取り扱われることがあります。

 

給料・ボーナス請求権と同時廃止の関係

 

同時廃止となるのは、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときです。

 

ですから、給料債権の4分の1と他の財産を併せても、破産手続費用を支払うのに足りない場合には「同時廃止」となります。

 

さらに、給料債権は、事実上、「自由財産」として扱われますから、破産財団に組み入れられません。

 

以上から、給料の4分の1相当額は考慮されず、その他の財産で破産手続費用を支払うのに不足するのであれば「同時廃止」となります。

 

これも例を挙げてみましょう。

 

申立人が、破産手続開始時に40万円の給料債権と15万円の財産を持っていたとします。(他の財産・免責不許可事由は無いものとします)

 

この場合、破産法の原則でいくと、給料債権の4分の1の10万円と15万円の財産の合計25万円の財産がありますので、「同時廃止」とはなりません。

 

しかしながら、東京地裁の運用では、給料債権は全額自由財産となり破産財団に組み入れられませんので、破産財団としては10万円しか無いということになります。

 

したがって、20万円の破産手続費用を支払うだけの財産が無いということになるので「同時廃止」となります。

 

とは言うものの、給料・ボーナスの4分の1の金額だけでも、20万円を超えるような場合には「管財事件」となることもあり得るでしょう。

 

・・・以上が「自己破産すると給料やボーナスはどうなる」についてのご紹介でした。

 

月々の給料やボーナスは日々の生活に必要な大事なお金です。

 

その取扱いについては、注意が必要です。

 

自己破産を検討されているのであれば、専門家(弁護士や司法書士)に相談されるのが最も良いと管理人は考えます。

 

では、また。

 

自己破産すると生命保険等はどうなるの?~自己破産における財産処分(その3)~

こんにちは。管理人です。

借金地獄からに脱却における必殺技、「自己破産」。

自己破産をした場合には、借金をチャラにしてもらう(=免責を受ける)ために、「自由財産」を除く保有資産を差し押さえられることになります。

 

その「財産処分」について、一つずつ見ていきましょう。

 

今回は「生命保険等はどうなるの?」についてです。

 

自己破産において、生命保険契約はどう取扱うのか?

 

生命保険を解約した場合に戻ってくるお金のことを解約返戻金といいます。

 

金額は保険に加入している期間や保険料、保険契約の内容などによって異なります。

 

ただ、掛け捨ての保険の場合などは、概ね戻ってこないこともあります。

 

当然のことながら、保険の解約返戻金は、保険契約を解約しなければ返ってきません。(*1)

 

しかしながら、この保険の「解約返戻金請求権」も、破産手続上では「資産」として扱われます。

 

破産財団には、「将来の請求権」も含まれるからです。

 

そして、この解約返戻金請求権は、差押禁止債権ではないので自由財産には含まれません。

 

したがって、解約返戻金請求権は「換価処分が必要な財産」ということになります。

 

要するに、以下がのどちらかになるのが原則となります。

 

① 破産者が自ら保険を解約して解約返戻金を破産管財人に渡す

② 破産管財人が保険を解約して解約返戻金を直接回収するかです。

ただし、東京地裁の運用では少々異なります。(*2)

 

*1 解約しない限り、解約返戻金債権も発生していないということになります。

*2 東京地裁では、20万円未満の生命保険解約返戻金請求権は、自由財産の拡張基準(換価基準)により自由財産として取り扱っています。なお、この返戻金見込額は、加入している生命保険全部の解約返戻金見込額合計で計算されます。

 

生命保険以外の保険解約返戻金の取扱い

 

前述の注意書きの*2で書きましたが、東京地裁での運用では、生命保険の解約返戻金だけが自由財産となるとされています。

 

しかしながら、実際には、「自動車保険」や「傷害保険」などの生命保険以外の任意保険も自由財産の拡張の対象とするのが一般的です。

 

以下の生命保険以外の保険も含めて、すべての保険の解約返戻金見込額の合計が20万円未満であれば,自由財産として取り扱われる運用となっています。

 

① 養老保険

② 傷害保険

③ 自動車保険

④ 火災保険

⑤ 地震保険

⑥ 損害賠償保険など

 

ただし、健康保険・厚生年金などの社会保険(*3)は、解約返戻金はありませんので処分の対象外になっています。

 

*3 国民健康保険国民年金も同様です。

 

生命保険等と同時廃止の関係

 

自己破産の申立てにおいて「同時廃止」となる条件は「破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足する」と認めるときです。

 

ですので、解約返戻金見込額の合計と他の財産の合計額をもってしても、破産手続費用を支払うのに不足している場合、「同時廃止」となります。

 

また、東京地裁では、すべての保険契約の解約返戻金見込額合計が20万円未満の保険契約解約返戻金は自由財産として扱われます。

 

要するに、すべての保険契約の解約返戻金見込額合計が20万円未満の保険契約解約返戻金は破産財団に組み入れられないことになりますから、この場合にでは、その他の財産で破産手続費用を支払うのに不足する場合には「同時廃止」となります。

 

例を挙げてみましょう。

申立人は破産手続開始時に保険解約返戻金見込額合計が15万円の保険とそれ以外に10万円の財産を持っていたとします。(他の財産・免責不許可事由は無いものとします)

 

この場合、破産法の原則では、合計で25万円の財産があることになるので「同時廃止」とはなりません。

 

しかしながら、東京地裁の基準では、20万円未満の保険契約解約返戻金請求権は自由財産となり破産財団に組み入れられません。

 

ゆえに、破産財団としては上記の保険契約解約返戻金請求権を除いた10万円しか無いということになります。

 

したがって、20万円の破産手続費用を支払うだけの財産が無いということになるので「同時廃止」となります。

 

なお、繰り返しになりますが、これはあくまで東京地裁の「運用」です。

 

他の裁判所では、財産が25万円あると判断されて「少額管財」となるということもありえます。

 

あらかじめ確認しておく必要があるでしょう。

 

・・・以上が「自己破産すると生命保険等はどうなる?」についてのご紹介でした。

 

本稿が自己破産を視野に入れている方々にとって、ご参考となれば幸いです。

 

では、また。

 

自己破産すると預金・貯金はどうなるの?~自己破産における財産処分(その2)~

こんにちは。管理人です。
 
借金地獄からに脱却における必殺技、「自己破産」。
 
借金をチャラにしてもらう(=免責を受ける)ために、「自由財産」を除く保有資産を差し押さえられることになります。
 
今回は「預金・貯金はどうなるの?」についてです。

自己破産における預金・貯金の取扱いの原則とは?

 

しばしば誤解されがちなのですが、法的に見ると、「預金・貯金」「現金」は異なるものです。

 

現金というのは、あくまでも手元にある「お金」そのものを指します。

 

一方、「預金・貯金」に残高があるということは、銀行等にお金を預けてあるということです。

 

つまり、お金を持っている(=預貯金残高に相当する現金を持っている)のは、銀行等になるわけです。

 

では、預貯金者が持っているのは何でしょうか?

 

それは「債権」です。

 

「債権」とは、この場合、銀行等に対して、「預貯金として預けているお金を返せと言える権利」を指します。(*1)

 

この預貯金払戻請求権は自己破産においては「差押禁止債権」には当たりません。

 

つまり、法律上、「自由財産」に該当しないので「破産財団に組み入れられ、没収される」のが原則となります。(*2)

 

*1 これを、一般に「預貯金払戻請求権」などと呼ぶこともあります。

*2 東京地裁では全預貯金口座の残高の合計残高が20万円未満の預貯金は、自由財産の拡張基準によって自由財産として扱うことになっています。

 

預貯金と同時廃止の関係

 

同時廃止となるのは、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときです。

 

したがって、預貯金の残高と他の財産を併せても、破産手続費用を支払うのに足りない場合には,同時廃止となります。

 

さらに、東京地裁では,残高合計が20万円未満の預貯金は自由財産として扱われます。

残高合計が20万円未満の預貯金は破産財団に組み入れられないことになります)

 

そのため、預貯金残高が20万円未満の場合、預貯金以外の財産で破産手続費用を支払うのに不足するときには、同時廃止となります。

 

例を挙げてみましょう。

 

申立者は、破産手続開始時に残高合計が15万円の預貯金とそれ以外に10万円の財産を持っていたとします。(他の財産・免責不許可事由は無いものとします)

 

この場合、破産法の原則で考えると、「合計で25万円の財産」がありますから、同時廃止とはなりません。

 

しかしながら、東京地裁の基準だと、預貯金は自由財産となり破産財団に組み入れられません。

 

ですから、破産財団としては預貯金を除いた10万円しか無いということになります。

 

したがって、20万円の破産手続費用を支払うだけの財産が無いということになるので同時廃止となります。

 

ただし、これはあくまで東京地裁の「運用」です。

 

その他の裁判所では異なる運用がとられている場合もありますので、あらかじめ確認しておく必要があるでしょう。

 

・・・以上が「自己破産における預金・貯金の取り扱い」に関するご紹介でした。

 

最後に書きましたように、東京地裁の基準に他の裁判所が準じているかは、各裁判所で異なります。

 

もし、自己破産をご検討される場合は、弁護士・司法書士に相談して、確認されることをおススメします。

 

では、また。

 

自己破産すると手持ち現金はどうなるの?~自己破産における財産処分(その1)~

こんにちは。管理人です。

借金地獄からに脱却における必殺技、「自己破産」。

借金をチャラにしてもらう(=免責を受ける)ために、「自由財産」を除く保有資産を差し押さえられることになります。

今回からはその「財産処分」について、一つずつ見ていきましょう。

まずは「手持ちの現金はどうなるの?」についてです。

「現金」とは何か?

まず、前提を確認しておきましょう。

ここで云う「現金」とは、手持ちのお金のことを指しています。

「預金」や「貯金」は、銀行等から引き出せばすぐに現金化できます。

しかし、法的に見ると、あくまで銀行等に対する「預貯金払戻請求権」という債権となります。

つまり、本稿でいう「現金」には含まれないということに、注意してください。

自由財産となる現金

破産法では、「民事執行法第131条第3号 に規定する額に2分の3を乗じた額の金銭」は自由財産となるとしています。

そして「民事執行法第131条第3号に規定する金銭」とは「標準的な世帯の2月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭」とされています。

つまり、これに2分の3を乗じた額の金銭は自由財産となる、というわけです。

では、「標準的な世帯の2月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭」とは、どのくらういでしょうか?

実は、この金額は政令(民事執行施行令)によって定められています。

この民事執行施行令では「標準的な世帯の2月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭」とは「66万円の現金」であるとしています。

上記の通りでいうと、破産法において自由財産となる現金は、上記66万円に2分の3を乗じた現金、すなわち、「99万円の現金」ということになります。

ゆえに、自己破産しても,99万円以下の現金は自由財産となり、破産者が持っていて良いということになります。

自己破産における現金の取扱い

上記の通り、破産法では現金のうち99万円までは自由財産となりますので、破産財団の対象外として自由に使ってよいということになります。

一方で、99万円を超える現金を持っている場合はどうなるのでしょう?

この場合には、99万円を超える部分は破産財団に組み入れられます。

よって、破産管財人に引き継ぐことになります。

例えば、100万円の現金を持っている場合には99万円までは破産者が持っていてもよいのですが、1万円は破産管財人に引き渡して、配当にまわしてもらうということになるのです。

現金の所持と同時廃止の関係

上記のとおり、99万円以下の現金は自由財産となるので、破産手続開始時に99万円以下の現金を持っていた場合、換価すべき財産はなく、同時廃止となるように考えることもできます。

しかしながら、残念ながら、そううまくはいきません。

東京地裁の場合、33万円以上の現金がある場合には管財事件(通常は少額管財)となるという運用になっています。

これも例を挙げてみましょう。

申立人が現金99万円を持っていたとします。(ほかの財産は無いものとします)

この99万円の現金は自由財産となります。

ただし、手続としては少額管財となるため、引継予納金として20万円を支払うことになります。

したがって、結局のところ、自己破産した場合に持っていられる現金は、79万円ということになります。

では、200万円の現金を持っていた場合はどうなるでしょうか?(こちらもその他の財産は無いものとします)

この場合は、自由財産となるのは99万円だけですから、残りの101万円は破産財団に組み入れることになります。

もっとも、引継予納金については、この101万円に含まれていると考えるのが通常でしょう。

・・・以上が「自己破産における手持ち現金の取り扱い」についてでした。

自己破産しても、できるだけ現金を手元に置いておきたい、と考えるのが人情です。

しかしながら、その気持ちが強まって「隠し財産」のような形で現金を隠しておけば、これは「免責不許可事由」とみなされかねませんので、注意が必要です。

やはり、自己破産を視野に入れる場合は、専門家にしっかり相談されるべきと管理人は考えます。

では、また。