自己破産すると預金・貯金はどうなるの?~自己破産における財産処分(その2)~
自己破産における預金・貯金の取扱いの原則とは?
しばしば誤解されがちなのですが、法的に見ると、「預金・貯金」は「現金」は異なるものです。
現金というのは、あくまでも手元にある「お金」そのものを指します。
一方、「預金・貯金」に残高があるということは、銀行等にお金を預けてあるということです。
つまり、お金を持っている(=預貯金残高に相当する現金を持っている)のは、銀行等になるわけです。
では、預貯金者が持っているのは何でしょうか?
それは「債権」です。
「債権」とは、この場合、銀行等に対して、「預貯金として預けているお金を返せと言える権利」を指します。(*1)
この預貯金払戻請求権は自己破産においては「差押禁止債権」には当たりません。
つまり、法律上、「自由財産」に該当しないので「破産財団に組み入れられ、没収される」のが原則となります。(*2)
*1 これを、一般に「預貯金払戻請求権」などと呼ぶこともあります。
*2 東京地裁では全預貯金口座の残高の合計残高が20万円未満の預貯金は、自由財産の拡張基準によって自由財産として扱うことになっています。
預貯金と同時廃止の関係
同時廃止となるのは、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときです。
したがって、預貯金の残高と他の財産を併せても、破産手続費用を支払うのに足りない場合には,同時廃止となります。
さらに、東京地裁では,残高合計が20万円未満の預貯金は自由財産として扱われます。
(残高合計が20万円未満の預貯金は破産財団に組み入れられないことになります)
そのため、預貯金残高が20万円未満の場合、預貯金以外の財産で破産手続費用を支払うのに不足するときには、同時廃止となります。
例を挙げてみましょう。
申立者は、破産手続開始時に残高合計が15万円の預貯金とそれ以外に10万円の財産を持っていたとします。(他の財産・免責不許可事由は無いものとします)
この場合、破産法の原則で考えると、「合計で25万円の財産」がありますから、同時廃止とはなりません。
しかしながら、東京地裁の基準だと、預貯金は自由財産となり破産財団に組み入れられません。
ですから、破産財団としては預貯金を除いた10万円しか無いということになります。
したがって、20万円の破産手続費用を支払うだけの財産が無いということになるので同時廃止となります。
ただし、これはあくまで東京地裁の「運用」です。
その他の裁判所では異なる運用がとられている場合もありますので、あらかじめ確認しておく必要があるでしょう。
・・・以上が「自己破産における預金・貯金の取り扱い」に関するご紹介でした。
最後に書きましたように、東京地裁の基準に他の裁判所が準じているかは、各裁判所で異なります。
もし、自己破産をご検討される場合は、弁護士・司法書士に相談して、確認されることをおススメします。
では、また。