少額管財の手続を知ろう!(その2)
前回は、「自己破産における「少額管財」の手続(その1)」として、以下の流れの1~10までをご紹介しました。
今回は11~18についてご紹介します。
11 破産手続開始決定・破産管財人の選任
自己破産申立ておよび債務者審尋の後で、裁判所によって,破産手続開始決定(*1)がなされます。
この破産手続開始決定と同時に、「破産管財人」が選任されます。
破産管財人は、当該裁判所の管轄地域内にある法律事務所に所属する弁護士が選任されるのが一般的です。
破産手続開始決定がなされると破産者の方の財産は、自由財産を除いて、破産管財人に「管理処分権」が与えられることになります。
*1 かつては「破産宣告」と呼ばれていたものです。
12 破産管財人との打ち合わせ日の調整
「破産管財人」が選任されると、裁判所から誰が選任されたかについて申立人破産者へ連絡がきます。
そして、その破産管財人に申立書の副本等を送付するとともに、打ち合わせの日程を調整します。
通常は、破産手続開始決定後すみやかに、破産管財人、申立人破産者、破産者代理人による三者打ち合わせをすることになります。(*2)
*2 東京地方裁判所においては、申立てから破産手続開始決定までの間に打ち合わせすることが求められています。
13 引継予納金の納付
「破産管財人」は選任後、すみやかに破産管財人名義の専用預金口座を作成します。
そして、申立人破産者は、この破産管財人名義口座に引継予納金を振込入金することになります。(*3)
なお、東京地方裁判所では、引継予納金の分割払いが認められています。
分割払いの金額は,月額5万円ずつです。
また、東京地方裁判所において分割払いを選択した場合は、積立金額が総額で10万円以上になったときに破産手続開始決定がされます。
*3 東京地方裁判所では、引継予納金は、原則として20万円です。
14 破産管財人との打ち合わせ・面接
12で書きましたが、事前に調整しておいた日程で申立人破産者は破産管財人と打ち合わせ・面接を行います。
前述のとおり、「破産管財人」には、申立てをした裁判所の管轄地域に所在する弁護士が選任されることになっていますので、通常は、その破産管財人の所属する法律事務所で打ち合わせを行います。
打ち合わせにおいては,申立書の記載内容(債務状況、資産状況、家計状況など)の確認を行います。
この段階で不足書類があれば、提出を求められますので注意が必要です。
また、「免責不許可事由」があるか、あった場合、裁量免責を与えてよいかを判断するために必要となる事項の聴取などが行われます。
15 破産管財人による管財業務の遂行
破産管財人は「破産手続開始決定後、すみやかに管財業務に取り掛からなければならない」とされています。
具体的には、以下の業務が該当します。
・財産の調査
・管理・換価処分
・免責不許可事由等の調査
この破産管財人の調査等については、申立人破産者には協力を義務づけられています。(*4)
*4 この調査等に協力しなかった場合、そのこと自体が免責不許可事由となってしまいます。
16 債権者集会・免責審尋
破産手続では、最後に裁判所において債権者集会が開催されます。(*5)
第1回目の債権者集会は、申立てから概ね3か月後に裁判所において開催されます。
この債権者集会には、債権者も出席可能です。(*6)
債権者集会においては、破産管財人による管財業務の報告が行われます。
そこで配当に充てるだけの財産がなく、他に問題が特になければ、破産手続は終結します。これを「異時廃止」といいます。
一方、配当がある場合には、別途、配当の終了報告を行う期日が指定されます。(*7)
債権者集会において、破産手続が終結した場合、引き続いて「免責審尋」が行われます。
免責審尋では、破産管財人から免責を与えてよいかどうかについての意見が述べられます。
この債権者集会・免責審尋においては、破産者にも発言が求められる場合もありますが、それほど詳細な発言が求められるわけではありません。
また時間にすると、よほど問題がある事案でない限りは5分か10分程度で終わります。
*5 破産手続きの途中に開催されることもあります。
*6 ただし,金融機関債権者が出頭することはほとんどありません。
*7 これを「任務終了報告集会」といいます。ただし,破産者は出頭する必要はありません。
17 免責許可・不許可決定
上述の「免責審尋」から概ね1週間程度で、裁判所によって免責の許可または不許可の決定がなされます。
免責の決定が確定すると債務の支払義務を免除することが確定します。
免責許可の確定は,決定後2週間ほどの後に官報公告され、さらにそこから2週間で確定しますので、確定までは概ね1か月後ということになります。
なお、免責が不許可となった場合には、申立てをした地方裁判所を管轄する高等裁判所に対して異議申立て(即時抗告)をすることができます。
18 債権者への配当・任務終了報告集会
破産債権者に対する配当がある場合には、破産管財人において各債権者に対して配当を行います。
配当がある場合は、債権者集会において配当後の任務終了報告集会期日が設定されます。
なお、配当自体は、破産管財人が行うことから、申立人破産者の出頭は不要とされることが多くなっています。
・・・以上、2回にわたって「少額管財」の手続きについてご紹介しました。
緊張するのは、やはり裁判官からの質問を受ける「免責審尋」等ですね。
いくら短時間で終了しますから、と弁護士に言われていたとしても、気分は完全に「犯罪者」ですから。(もっとも、このような体験をするからこそ、借金生活に戻りたくない! 人生をリセットしたい!と真摯になれると思います)
この記事が自己破産をご検討されている方々にとってご参考となれば幸いです。
では、また。