大幅に減らせると言うけれど、個人再生で借金はどれくらい減るんだろうか?(減額の目安)
こんにちは。レディックです。
今回も「個人再生」の記事です。
「個人再生」と言われるのは「民事再生手続」の個人版のことで、「民事再生法」という法律に則って、裁判所が調停するような形で行なわれるのが原則です。
そして、個人再生には給与所得者等再生と小規模個人再生という2種類の整理方法がありますが、共通して言えることは、「借金を大幅に減額でき、かつ(場合によっては)自宅や自家用車を維持したまま、借金整理を行うことも可能」と言う点です。
「借金を大幅に減額できる」と言う点では「個人再生」は、同じ債務整理手続きである「任意整理」よりも大きく借金を減らすことができます。
「任意整理」では、個別の債権者の同意が必要ですが、「個人再生」は「法的整理」ですので裁判所が介在することで、個々の債権者が同意しなくても借金を減額できるからです。
ただ、そうは言っても、いくら「個人再生」でも自由に借金を減額できるわけではありません。
・・・というわけで、「個人再生における減額の目安」を見ていきましょう。
「個人再生」による債務の支払額を把握しよう!
「個人再生」の手続きによる債務の圧縮(借金の減額)は以下の通り、定められています。
【個人再生手続きの債務の支払額】
上図のように、「個人再生」の手続きでは借金の額が大きくなるほど、減額率が高くなります。
特に借金額が3000万円~5000万円の場合には、10分の1である300万円~500万円にまで減るので、とても効果的です。
反対に、借金額が100万円以下であれば、「減額なし」ということで、個人再生をしても借金が減りません。
このため、借金額が少ない場合には、任意整理の方が適しているケースが多くなります。
では、圧縮後の債務支払いについて月額にするとどのくらいになるでしょうか。
おおよそ以下の通りとなります。
【個人再生手続きにおける債務の減額と月次返済額】
上図によると、例えば債務総額(借入額の総額)が300万円の人が、「個人再生」をすると100万円だけを返済すれば良いことになりますが、「個人再生」では原則として3年間の分割払いで支払うことになりますから、月の返済は2万8000円程度になります。
借金総額が300万円の人の場合、「個人再生」の手続きに入る前の返済額が月額で3万円以下ということはないでしょう。
ですので、月の返済総額を抑制できるというのも、個人再生の大きなメリットの一つです。
なお、「給与所得者等再生手続」では以下の2点を比較します。
その結果、どちらか高い額の方を支払うことになります。
では2の「可処分所得の2年分」とは何でしょうか?
可処分所得とは、収入のうち、本人の自由に処分できる金額を指す用語ですが、具体的には、「自分の収入の合計額から所得税などの税金を控除し、さらに生活費用として政令で定められた費用を差し引いた金額」となります。
なお、可処分所得の金額は、被扶養者や居住地域などによって異なります。
「給与所得者等再生」は、サラリーマンや公務員などの給与所得者が利用する手続きなので、給与額からそうした控除分を引き算して、2年分を計算して可処分所得の2年分を算出します。
上述の2は1よりも高額になってしまうことが多いため、「給与所得者等再生手続」を選択すると、「小規模個人再生手続」と比べて返済総額が大きくなってしまう傾向があります。
そこでサラリーマンの方でも「小規模個人差姿勢手続」を選択することが多くなっています。
自己破産との比較~清算価値保障原則を知っておこう~
清算価値保障原則とは?
さらに「小規模個人再生手続」、「給与所得者等再生手続」のいずれでも、減額の判断条件として「自分の財産を全て処分した場合に得られる金額」も加わります。(下の3です)
- 「表(【個人再生手続きの債務の支払額】)の基準により減額された債務額」
- 「自分の可処分所得(自分の収入の合計額から税金や生活費用として政令で定められた費用を控除した残額)の2年分の金額」
- 自分の財産を全て処分した場合に得られる金額
3の「自分の財産を全て処分した場合に得られる金額」と1・2の金額と比較して3の金額のほうが大きい場合、3の金額を36回分割して支払うことになります。
これを「清算価値保障原則」といいます。
清算価値保障原則とは、「個人再生手続においては、自己名義の財産を全て処分した場合に得られる以上の金額を返済しなければならない」という原則です。
例を挙げてみましょう。以下の条件の債務者がいたとします。
- 債務総額:300万円
- 自家用車の評価額:70万円
- 生命保険の解約返戻金:80万円
前項で挙げた例で言えば、債務総額が300万円である人が70万円の価値を持つ車を所有し、80万円の生命保険の解約返戻金がある場合に、個人再生を行うと、返済しなければいけない借金の総額は100万円ではなく、150万円(70万円+80万円)になるということです。
上述の条件で自己破産手続を行ったとすると、裁判所が免責(借金をチャラ(=ゼロ)を認可するためには、自己名義の財産を差し押さえ、換金したうえで全ての債務者に均等に配分することが必須になります。*1
もし、同じ条件で「個人再生」を選択して、1,2の金額が150万円未満であれば、自己名義の財産の総額を下回る額の返済しかしないで良い、というこちになるため、「自己破産」よりも優位な条件となってしまいます。
以上から、破産手続と個人再生手続との間の公平を保つ」目的のため、「清算価値保障原則」が設けられているわけです。
さらに例を見て、返済額がどのように決まるか、見てみましょう。
【2つの手続きにおける返済総額の決め方】
【解説】
- AさんとBさんは「小規模個人再生手続」を選択したほうが、返済総額が小さくて済むことになります。*2
- Cさんについては、自己名義の財産の総額が大きく、どちらの手続きを選択しても返済総額が変わらないため、再生計画が認可されやすいように「給与所得者等再生手続」を選択すべきということになります。
清算価値の財産
清算価値保障原則で計算対象になるのは、以下のような財産や権利(債権)です。
【清算価値保障原則の計算対象】
以上が「個人再生における減額の目安」のご紹介でした。
「個人再生」は裁判所が介入する「法的整理」ですので、様々な書類の準備などが面倒なことから自身が独力で限られた時間で行うには、難しい点が顕著です。
「個人再生」をご検討であれば、一度、弁護士などの専門家に相談されることをおススメします。