サラリーマンの方、必見!~「給与所得者等再生」とは?
こんにちは。借金生活リセット倶楽部のレディックです。
ご存知の通り、「債務整理」とは弁護士や司法書士に依頼する、借金の減額交渉を指す言葉ですが、2000年に解禁された弁護士のコマーシャルの自由化とも結びついています。
また、2000年と言ったら、未だ消費者金融が最盛期だった時代ですが、このバブル時代における消費者金融等からの借金対策に。国の方も新しい制度の制定などで力となりました。
「個人再生」はその中の1つになるわけです。*1
上記の通り、「個人再生」は民事再生手続の個人版のことで、裁判所が調停するような形で行なわれるのが原則です。
そして、個人再生には給与所得者等再生と小規模個人再生という2種類の整理方法が用意されていますが、「給与所得者等再生」は、小規模個人再生の特則という位置づけとなっています。
今回は「給与所得者等再生」についてご紹介します。
個人再生の特則~「給与所得者等再生」とは?
前回の「小規模個人再生」でも書きましたが、「個人再生」には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の二つがあり、「給与所得者等再生」は個人再生の特則に位置付けられます。
「給与所得者等再生」の「給与所得者等」とは何でしょうか?
これは、個人再生を利用できる個人のうちでも、収入が特に安定しているサラリーマンなどを指す用語です。
「給与所得者等再生」の返済額の考え方
最低弁済額について
前回、書きましたが「小規模個人再生」では最低弁済額について以下のとおり定義していましたね。「給与者等再生」もこの点については同様に扱っています。
*例えば借金が200万円であれば、最低弁済額は100万円に、借金が1000万円であれば、5分の1の200万円となります。
清算価値の保障
「小規模個人再生」では「清算価値の保障」に基づいて「清算価値」を算出し、上記の「最低弁済額」と比較していました。
「清算価値の保障」とは「個人再生手続きを行う場合には、自己名義の財産を全て処分(換金)した場合に得られる以上の金額(=清算価値)を返済しなければいけない」という考え方です。
例えば借金総額が500万円の人がいたとします。
この人は以下のような換金価値のある資産を有していたとします。
- 50万円の換金価値のある自動車を保有
- 80万円の解約返戻金がある生命保険に加入
この場合の返済額を考えてみます。
この場合、「小規模個人再生」を行うとすると、上記の表に基づいて、「最低弁済額」は100万円となります。
しかしながら、保有資産を全部、換金すると50万円+80万円で130万円になります。つまり「清算価値」は130万円となります。
「清算価値の保障」によれば、「清算価値」よりも返済金額が下回ることは認められていません。よって
「130万円(清算価値)」>「100万円(最低弁済額)」
となりますので、返済額は130万円となります。
つまり、「自己破産では、借金をゼロにする代償として自己名義の保有資産を全て処分しなければいけない、のに対して、同じ条件で、個人再生手続を行うとした場合、自己名義の保有資産を処分した総額を下回る金額しか返済しなくて良いとすると不公平となってしまう」ことを考慮に入れているわけです。
この場合は最低弁済額の100万円よりも清算価値の130万円の方が高額であるため、130万円が返済額になるというわけです。
そして、「給与所得者等再生」でも、この考え方(「清算価値の保障」)が適用されます。
可処分所得2年分の額
「給与所得者等再生」では返済額を決定するために、「小規模個人再生」で適用される上述の二つの条件に加えて、もう一つの条件があります。
それは「可処分所得の2年分の金額」というものです。
さて「可処分所得」とは何でしょうか?
「可処分所得」とは
「自分の収入の合計額から所得税などの税金を控除し、さらに生活費用として定められた費用を差し引いた金額」
を指す用語です。
・・・以上の3つの金額(「最低弁済額」、「清算価値」、「可処分所得2年分の金額」)のうち、最も高い金額が返済金額になります。
再生計画認可の際の債権者の立場
「小規模個人再生」では再生計画認可の際に以下のような条件がありました。
- 再生計画が裁判所に認可されるためには、債権者の数の半数以上の反対がなく、かつ反対した債権者の債権額の合計が全債権額の半額を超えていないこと
しかしながら、「給与所得者等再生」には上記のような制約条件はありません。
再生計画認可の際には債権者の「意見を聴く」のみとなっています。
「給与所得者等再生」より「小規模個人再生」の方が有利!?
「給与所得者等再生」はサラリーマンなどに特化していますが、現在のところ、個人再生申立てのほとんどは「小規模個人再生」となっています。
せっかくサラリーマンなどに限定して制定したのに、あまり利用されていないというのは変な気がしますよね?
どういうわけなんでしょうか。
・・・その理由として、返済額決定の際の条件の三つめ、「可処分所得の2年分の金額」の存在があります。
実際には、個人再生の手続きを行う上で、借金額や清算価値などを棚卸して、併せて「可処分所得」を計算すると「可処分所得の2年分の金額」の方が「最低弁済額」や「清算価値」よりも高額になることが多いのです。
このため、「給与所得者等再生」のほうが「小規模個人再生」よりも返済総額が大きくなりがちなのです。
この点が原因で、サラリーマンなどの給与所得者であっても「小規模個人再生」を選択する、ということになるわけです。
なお、再生計画認可の際に「給与所得者等再生」では「再生計画認可について債権者の過半数の反対があると認可されない」という条件がありますが、サラリーマンでも債権者が借金の減額についてクレームをつけてこない、と判断できるような場合には「小規模個人再生」を選択することも可能となっています。
・・・以上が「給与所得者等再生」のご紹介となります。
個人再生を選択する場合は裁判所を介在させるため、限られた時間複雑な手続きを要することもありますので、自身で個人再生手続きを進めることは、かなり難しいのが実情です。
個人再生を含め、債務整理を検討する際は、やはり専門家に相談することをおススメします。