個人再生で借金は減額できるけど・・・住宅ローンはどうなるの?~住宅ローン特則とは?
債務整理に関しては、バブル時代における消費者金融等からの借金対策として、2000年くらいから採用されてきた方法であり、国の方も新しい制度を創設するなどしてバックアップをしてきました。
「個人再生」がそのひとつというわけです。
「個人再生」は民事再生手続の個人版のことで、裁判所が調停するような形で行なわれるのが原則です。そして「個人再生」には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類の整理方法があります。
その特徴として、「任意整理」よりも債務を圧倒的に圧縮可能なことがあります。また、もう一つの大きなメリットとしては、持ち家を手放さず債務整理可能な点が挙げられます。これを「住宅ローン特則」と言います。
では、「住宅ローン特則」とはどんなものでしょうか?
今回はその「住宅ローン特則」についてのご紹介です。
住宅ローンと債務整理
「住宅ローン特則」のお話をする前に前提として「受託ローン」と「債務整理」の関係に触れておく必要があります。
住宅ローンを組んで住宅や土地などの不動産を購入するた場合、一般的に購入する不動産に抵当権を設定して住宅ローン債権の担保としますよね。
もし住宅ローンが払えなくなった場合、住宅ローンの債権者(銀行など)は抵当権が設定されていれば、不動産を処分して,その代金を優先的に住宅ローンの返済に充てることが可能となります。*1
債務整理を行う場合に,この住宅ローンが焦点となることが少なくありません。
「自己破産」であれば、住宅ローン以外にも借金があるという場合は、それらの借金について支払義務はなくなりますが、代償としてその住宅は処分しなければなりません。
「任意整理」という方法もあるにはありますが,そもそも住宅ローンは最大限の返済期間を組んでいる場合が多い*2ため、住宅ローンそれ自体をリスケジュール・整理することは現実的ではありません。
さらに言うと「任意整理」だと、個々の返済金額が大きくなる場合が多く,住宅ローンとそれ以外の借金を並行して返済するのは困難である、ということも少なくありません。*3
しかしながら、注意しておかなければいけない点は「自分名義の住宅(=自宅)は生活の基盤であり、単に1つの財産というだけではない」ということです。
このような存在である「自宅」を失ってしまうと,債務者の人生の再出発を阻害する要因となりうるわけ、単に「一つの財産を失う」というだけでは済まなくなるわけです。
以上から個人再生手続においては申立人である債務者が自宅を手放さずに経済的更生を図れるようにするため,「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」という特別の制度を設けています。
この住宅資金特別条項は,小規模個人再生・給与所得者等再生のいずれの場合でも利用が可能です。
「住宅ローン特則」を理解しよう!
「個人再生」における「住宅ローン特則」とは「住宅資金特別条項」の別称であり、正式には「住宅資金貸付債権に関する特則」といわれる制度です。
ここで言う「住宅資金貸付債権」とは,分割払いの定めのある住宅の建設・購入・改良に必要な資金の貸付金債権のことをいい、平たく言うと主に「住宅ローン」を指す言葉です。
「住宅資金特別条項」とは、「住宅資金貸付債権(住宅ローン等)については従来どおりの返済を続けるか、あるいは返済期間などをリスケジュールして返済を続けることによって、自宅を処分されないようにし、かつ住宅ローン以外の借金だけを「個人再生」の手続きで減額・分割払いとすることができる」という制度です。
ようするに「住宅資金特別条項」を利用すれば,
- 自宅を処分せずに残すことができる
- 住宅ローン以外の借金については「個人再生」で大幅な減額と長期の分割払いが認可される
ことになります。
自宅だけは残したいけれど、住宅ローン以外の借金まで支払い続けていくことが難しい、という方にとっては非常に魅力的な制度です。
住宅ローンと「最低弁済額」
個人再生の「最低弁済額」を計算するとき、住宅ローン特則を利用するかどうかで結果が大きく異なります。
まず、「最低弁済額(債務支払額)」ですが、借金総額との関係は以下の通りとなります。
さて、住宅ローン特則を利用する場合を見てみましょう。
この場合、住宅ローンの金額は「負債総額」に含めずに計算します。
例を挙げてみましょう。
住宅ローンが3000万円、その他の負債が1000万円の場合だとします。
この場合、「負債総額」は1000万円として計算されます。
すると、借金は上記の表によれば、200万円にまで減額されて、住宅ローンの3000万円はそのままです。
一方、住宅ローン特則を利用しない場合には、住宅ローンの金額も「負債総額」に含めます。
たとえば上と同じケースの場合、「負債総額」は4000万円となりますので、最低弁済額は10分の1の400万円となります。ここには住宅ローンも含まれます。
これが「住宅を手放さなくても済む」根拠となります。
つまり、住宅ローンを個人再生の債務額に含めないことで「住宅」に関する債務が維持され(=住宅ローンの支払いを継続することで)、自分名義の住宅を手放さなくても良い、ということになります。
以上が「個人再生における「住宅ローン特則」のご紹介でした。
「個人再生」は裁判所が介入する「法的整理」ですので、様々な書類の準備などが面倒なことから自身が独力で限られた時間で行うには、難しい点が顕著です。
「個人再生」をご検討であれば、一度、弁護士などの専門家に相談されることをおススメします。