借金生活リセット倶楽部

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自己破産における「否認権」とは?

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こんにちは。管理人です。
自己破産について、いろいろと書いてきましたが、本日は「否認権」のお話です。
自己破産を申し立てた場合、破産手続開始決定前に処分(換金)した財産であっても、破産管財人「否認権」を行使することによって、「換価処分の対象となる」場合があります。
さて、この「否認権」とはいったい何でしょうか?
本稿では、この否認権についてご説明いたします。

否認権とは?

自己破産の手続では、「破産手続開始決定時」に申立者(破産者)が保有していた財産は、自由財産を除いて、破産管財人によって換価処分され、債権者に配当されることになっています。

ということから、破産手続開始決定のタイミングで破産者が所持していない財産は、換価処分の対象とならないのが原則です。

その一方で、破産手続開始決定前に処分してしまい決定時にはすでに破産者の所持する財産ではなくなっていた財産だったとしても、以下のように、債権者間に不公平を引き起こしたり損害を与えたりするおそれがあります。

①財産の換価処分を免れるためにあえて行われたような場合

②債権者間の公平が損なわれるような場合

そのため、破産法は、破産手続開始決定時点で債務者の所持するものとはいえなくなっている財産であっても、通常なら、破産債権者に配当されたであろう財産に関しては破産財団に組み入れさせることができる、つまり、破産管財人による換価処分の対象となる財産とすることができる、という制度を定めています。

これが、破産管財人による「否認権」という制度です。

簡単に言うと、通常であれば、破産財団に組み入れられて債権者に配当されるはずであったにもかかわらず、債務者の手元から離れてしまった財産を破産管財人が取り戻すという権利(*1)のことを指します。

例を挙げて説明すると・・・。

Aさんには、100万円相当の財産があったとします。

ところが、Aさんは、既に支払不能であったにもかかわらず、Bさんにこの財産をあげてしまいました。(本来であれば、この財産は債権者に配当されるべきものだったはず)

しかし、AさんがBさんに対して財産をあげてしまったため、その財産は債権者に配当されなくなってしまいます。

これは、債権者にとってみれば、極めて不利益です。

そこで、この財産は、あるべきところ、すなわち、「破産財団」に戻さなければなりません。

この財産を取り戻す破産管財人の権能が「否認権」なのです。

*1 権能とは、「ある事柄について権利を主張し、行使できる能力」を指します。

否認権行使の効果

否認権は,破産管財人の有する権能の一つです。

破産管財人によって否認権が行使されると、「破産手続開始決定時点で破産者の有するものとはいえない財産にであっても、その財産は、破産財団に組み入れられ、債権者に対する配当のための換価処分の対象となる」のです。

例えば、申立者が、破産手続開始決定前に第三者にある財産を贈与してしまったとしても、破産管財人の否認権行使により、その贈与はなかったものとされ、それにより,破産手続開始決定時点において、その財産を破産者が有していたのと同様に扱うことができる(つまり、「換価処分」できる)ようになるのです。

否認権の類型

否認権には,以下のような類型があります。

①詐害行為否認

②無償行為否認

③偏頗行為否認

(1)詐害(さがい)行為否認

詐害行為否認とは、破産者がした破産債権者を害する行為を否認する破産管財人の権能のことをいいます。

例えば、「換価処分を避けるため、財産を低価格で第三者に売買してしまった」ような場合がこれに当たります。

(2)無償行為否認

無償行為否認とは、破産者がした財産の無償行為を否認する破産管財人の権能のことを言います。

例えば、「財産をあげてしまった」場合などがこれに当たります。

(3)偏頗(へんぱ)行為否認

偏頗行為否認とは、既存の債務についてされた担保の供与、または債務の消滅に関する行為(偏頗(へんぱ)行為)を否認する破産管財人の権能のことをいいます。

例えば、「両親や友人にだけ、優先的に借金の返済をしてしまった」ような場合がこれに当たります。

・・・以上が「自己破産における「否認権」」のご紹介でした。

何度も書いていますが、「自己破産」は借金問題解決の必殺技でありますが、免責を受けるまでには相応のハードルがあることもまた事実です。

自己破産を視野に入れておられるのであれば、まずは弁護士か司法書士に相談することが一番と管理人は考えます。

では、また。

免責不許可事由があるとどうなる?もしかして同時廃止にならないの?

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こんにちは。管理人です。
借金生活からの脱却における起死回生の必殺技、「自己破産」。

自己破産の手続において免責不許可事由がある場合、同時廃止ではなく管財事件となることがあります。

本稿では、免責不許可事由がある場合の同時廃止の取り扱いについてご紹介いたします。

同時廃止の要件(破産法 第216条 第1項)

破産法第216条第1項では、自己破産の手続において同時廃止となるのは、破産財団をもって破産手続費用を支弁するのに不足すると認める場合であるとしています。

すなわち、破産者が持っている財産を換価処分しても、破産手続の諸費用すら支払えないことが明らかな場合には、同時廃止となるということです。

しかしながら、実際のところ、これだけでは同時廃止が成立することにはなりません。

実務の上では、上に書いたような財産がないことが明らかなことに加え、免責不許可事由が無いことが明らかな場合に、はじめて同時廃止となるとしています。

免責不許可事由がある場合

実は、破産法では「免責不許可事由が無い場合に同時廃止となる」とは書かれていません。

しかしながら、実務では、免責不許可事由があるかどうかの調査も破産管財人が行うのが通常です。また、裁量免責をしてよいかどうかの判断材料についての調査も,破産管財人が行うことになります。

破産手続では管財手続が原則であるにもかかわらず、同時廃止という制度が用意されているのは、「破産管財人を選任して調査を行わせる必要が無い場合にまで管財手続とする」のは意味がない(=無駄)からです。

しかしながら、たとえ、破産手続費用を支払うだけの財産が無いことが明らかであったとしても、免責不許可事由があるのならば,破産管財人による調査を行わせる必要がでてきますから,同時廃止とすることはできないということになります。

そのため,免責不許可事由がある場合には、管財手続が選択されるのです。

免責不許可事由がないことが不明な場合

では、免責不許可事由があるとはいえないけれども、無いとも言い切れないような場合はどうなるのでしょうか?

この場合は,そもそも免責不許可事由があるのかどうかについて、破産管財人による調査が必要となりますから、やはり、同時廃止ではなく,管財手続となってしまいます。、

まとめ

免責不許可事由があるかどうかを調査する必要がある場合、または、免責不許可事由があることを前提に,裁量免責を与えてよいかどうかを調査する必要がある場合には,管財手続が選択されます。

・・・ということは,同時廃止となるのは,上記のような免責調査が不要であることが必要ということになります。

要するに、同時廃止となるためには,免責不許可事由が無いことも明らかな場合でなければならないということです。もちろん、破産手続費用を支払うだけの財産がある場合には管財手続となります。

したがって、結局のところ、同時廃止となるのは、「破産者に破産手続費用を支払うだけの財産がないことが明らか」で かつ、「免責不許可事由が無いことも明らかな場合」であるということになります。

 

免責不許可事由とは?~自己破産が認められないケース~(その2)

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こんにちは。管理人です。
前回は「免責不許可事由とは?(その1)」を書きましたが、今回はその続きです。
免責不許可事由は以下のケースが該当します。

(1)不当な破産財団価値減少行為

(2)不当な債務負担行為

(3)不当な偏波(へんぱ)行為

(4)浪費または賭博その他の射幸行為

(5)詐術による信用取引

(6)業務帳簿隠滅等の行為

(7)虚偽の債権者名簿提出行為

(8)調査協力義務違反行為

(9)管財業務妨害行為

(10)7年以内の免責取得など

(11)破産法上の義務違反行為

ただし、免責不許可事由がある場合であっても,裁判所の裁量によって免責が許可されることはあります。(*1)

本稿では、(7)~(11)の免責不許可事由について、ご紹介いたします。

*1 これを「裁量免責」といいます。

免責不許可事由とは?

自己破産を申し立てる最大の目的は、裁判所によって免責を許可してもらうことです。「免責」とは、すなわち、「借金をゼロ(=チャラ)にしてもらうこと」です。

免責を許可してもらい、借金の支払いをしなくても良いという状態にしてもらうこと・・・これこそが、自己破産を利用する最大のメリットといえます。

・・・とは言うものの、「破産・免責の手続が全て終了すれば必ず免責が許可される」わけではありません。

「免責不許可事由」と呼ばれる一定の事由がある場合は、「免責が許可されない(=不許可となること)」があります。

自己破産をしても免責の許可を得られないのでは、申し立てた意味がありません。

したがって、自己破産を申し立てるに当たっては、「免責不許可事由の有無」を前もってよく把握しておく必要があります。

免責不許可事由になるケース(その2)

免責不許可事由については、「こういうときは免責されない」という内容が、破産法252条という法律で定められています。

具体的な免責不許可事由として11個のケースがありますので、以下で順番に解説していきます。

(7)虚偽の債権者名簿提出行為(破産法第252条7項)

自己破産手続では、申立者が借金をしている債権者すべてを一覧表にした書類(*2)を裁判所に提出する必要があります。

この一覧表(債権者名簿)に、故意で架空の債権者の名前を記載したり、わざと債権者の記入をしなかったりした場合は、免責不許可事由に該当します。

しばしば見られるのが、「親・友人・知人」などの借金を返済したい人の名前をわざと債権者名簿に載せないケースです。

債権者名簿に名前を記載して破産手続を行うと、借金は帳消しになってしまうからです。

親しい人にはきちんと返済したい気持ちがあったとしても、債権者名を債権者名簿に記載しないと、免責不許可事由になります。(*3)

*2 「債権者名簿」といいます。

*3 債権者名簿に債権者の一部を記入し忘れたような場合は、免責不許可事由には該当しません。

(8)調査協力義務違反行為(破産法第252条8項)

裁判官書記もしくは破産管財人に、破産手続に関する説明を拒んだり、虚偽の発言をしたりした場合には「調査協力義務違反行為」として、免責不許可事由に該当します。

財産を隠すなどの不誠実な態度を取ってしまうと、破産手続を進めてもらえなくなってしまいます。

借金は約束通りに返済するのが大原則ですから、申立人が自己破産をすると、債権者には大きな損失を与えることになります。

その埋め合わせとして、債権者は、申立人の財産を公平に分配して受け取る権利が認められているのです。

「調査協力義務違反行為」は、このような債権者の権利を害することになります。

 

(9)管財業務妨害行為(破産法第252条9項)

破産管財人が行う調査に対して妨害をすると「管財業務妨害行為」に該当するため、免責不許可事由になります。

破産管財人の業務は以下のとおりです。

①破産者との面談

破産者の財産を売却して現金化すること

③破産者を免責にすべき理由があるかどうかについての調査

④債権者集会(*4)で債権者に対して破産者の状況や手続きの進行について説明すること

*4 債権者集会…自己破産手続の中で、債権者に集まってもらい、破産者について調査した内容を報告する集会

 

(10)7年以内の免責取得など(破産法第252条10項)

過去7年の間に自己破産をして免責の許可を得ている場合や、 個人再生のうち給与所得者等再生による再生計画を認可されている場合は、免責不許可事由になります。

個人再生には小規模個人再生と給与所得者等再生の2種類があり、後者の個人再生を過去7年以内に行っている場合には免責不許可事由に該当します。

なお、実際に利用される個人再生のうちほとんどは小規模個人再生ですので、個人再生後に自己破産を行うことが認められないケースはまれといえます。(*5)

*5 過去に自己破産による免責や給与所得者等再生による再生計画を認可されている人であっても、裁判官の判断によって新たに自己破産による免責が認められるケースは少なくありません。

 

(11)破産法上の義務違反行為(破産法第252条11項)

破産者が手続の際に非協力的な場合は、「破産法上の義務違反行為」に該当します。これも、免責不許可事由になります。

具体的には、財産を隠したり、調査で虚偽の発言をしたりする場合が該当します。

申立人の自己破産手続を進めようとする裁判官や管財人などの指示に従わないと、免責が認められないことがあるという意味です。

・・・以上、2回にわたって「自己破産における免責不許可事由」について、ご紹介しました。

自己破産は借金生活から脱却する「必殺技」ですが、申立すれば必ず免責されるわけではない、ということがお分かりいただえたでしょうか。

自己破産を視野に入れておられるようであれば、まずは専門家に相談することから始めることおススメです。

 

では、また。

 

自己破産が認められないケース~免責不許可事由とは?(その1)~

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こんにちは。管理人です。
借金生活から脱却する起死回生の必殺技・・・「自己破産」
しかし、自己破産の手続を全て終了したからと言って、必ず免責が許可されるとは限りません。
破産法252条1項各号に列挙された事由がある場合には、「免責が不許可(=自己破産が認められない)」となります。
この破産法252条1項各号に列挙された事由のことを「免責不許可事由」といいます。

主に以下の11のケースが該当します。

(1)不当な破産財団価値減少行為

(2)不当な債務負担行為

(3)不当な偏波(へんぱ)行為

(4)浪費または賭博その他の射幸行為

(5)詐術による信用取引

(6)業務帳簿隠滅等の行為

(7)虚偽の債権者名簿提出行為

(8)調査協力義務違反行為

(9)管財業務妨害行為

(10)7年以内の免責取得など

(11)破産法上の義務違反行為

ただし、免責不許可事由がある場合であっても,裁判所の裁量によって免責が許可されることはあります。(*1)

本稿では、(1)~(6)の免責不許可事由について、ご紹介いたします。

*1 これを「裁量免責」といいます。

免責不許可事由とは?

自己破産を申し立てる最大の目的は、裁判所によって免責を許可してもらうことです。「免責」とは、すなわち、「借金をゼロ(=チャラ)にしてもらうこと」です。

免責を許可してもらい、借金の支払いをしなくても良いという状態にしてもらうこと・・・これこそが、自己破産を利用する最大のメリットといえます。

・・・とは言うものの、「破産・免責の手続が全て終了すれば必ず免責が許可される」わけではありません。

「免責不許可事由」と呼ばれる一定の事由がある場合は、「免責が許可されない(=不許可となること)」があります。

自己破産をしても免責の許可を得られないのでは、申し立てた意味がありません。

したがって、自己破産を申し立てるに当たっては、「免責不許可事由の有無」を前もってよく把握しておく必要があります。

免責不許可事由になるケース

免責不許可事由については、「こういうときは免責されない」という内容が、破産法252条という法律で定められています

具体的な免責不許可事由として11個のケースがありますので、以下で順番に解説していきます。(本稿では(1)~(6)までご紹介します)

(1)不当な破産財団価値減少行為(破産法第252条第1項)

自己破産手続きの直前や、手続き期間中に財産を隠したり、壊したり、誰かに譲ったりすると「不当な破産財団価値減少行為」で免責不許可事由になります。

自己破産による免責が認められると、申立者の借金はすべて免除される代わりに、申立者が所有している財産については現金化して債権者(申立者にお金を貸している人のことです)に分配しなければなりません。

財産を隠したり、壊したりすることで、財産の価値を減少させると、債権者が本来受け取れるはずのお金が少なくなってしまうため、こうした行為をしてしまうと免責不許可事由に該当してしまうのです。

「不当な破産財団価値減少行為」は、具体的には以下の行為などが該当します。

①現金を親族の口座に移す

②所有している不動産を誰かに譲る

③車の名義を変更する

(2)不当な債務負担行為(破産法第252条2項)

自己破産を申し立てて、破産するのを前提にわざと借金をするような行為は、「不当な債務負担行為」に該当するため、免責不許可事由に該当します。

具体的には以下の行為が該当します。

クレジットカードで商品を購入して売却する行為(*2)

ヤミ金など法律で定められている金利(年利20.0%)以上でお金を借り入れする行為

*2 いわゆる「クレジットカードショッピング枠の現金化」です。

(3)不当な偏波(へんぱ)行為(破産法第252条3項)

「不当な偏波行為」・・・あまり聞かない言葉ですが、これは簡単に言うと「債権者を平等に扱わないこと」を指す用語です。

具体的には、次のような行為を指します。

①特定の誰かに優先して借金を返済する

②他の債権者へ損害を与えることを目的として、一部の債権者に返済を行う

たとえば、親や友人が大事だからと、金融機関よりも優先して借金を返済すると「不当な偏波行為」になります。

①の「特定の人へ優先して借金を返済」していますし、金融機関はお金を受け取っていないので、②のとおり、損害を被ったことにもなるからです。

ただし、生活のためにガス・水道・電気代の支払いを行うことや、口座を空にするのを忘れて口座引き落としがされてしまったような場合には「不当な偏波行為」にはなりません。

(4)浪費または賭博その他の射幸行為(破産法第252条4項)

収入とは不釣り合いな浪費や賭博、射幸行為(*3)を過度に行っているような場合は、免責不許可事由に該当します。

具体的には以下があります。

①パチンコやスロットのギャンブル

②ブランド商品の購入

③ホストやキャバクラ通い

④株やFX取引きなど

ただし、裁判所に反省文を提出して生活を改善すれば、裁量免責になるケースが多いです。(*4)

*3 たまたま成功して得られる利益のことを言います。宝くじなどが該当します。

*4 生活改善したことを証明するために、毎月の収支表を提出する必要はあります。

(5)詐術による信用取引(破産法第252条5項)

これは「借金を完済できないと知りつつ、支払いできるフリをして金融機関などから借り入れをする」ことなどを指します。

「詐術」というのは、簡単にいえば相手をだまし信用させて、返済能力はないのにお金を借りてしまうことです。

具体的には、金融機関の審査の際に年収をごまかして借り入れしたのなら「詐術による信用取引」に該当する可能性が高いと考えます。

(6)業務帳簿隠滅等の行為(破産法第252条6項)

仕事の業務や財産に関する書類の偽造や隠蔽をすると、これも免責不許可事由に該当します。

「業務帳簿隠滅等の行為」に該当する書類は、例として、以下のものがあります。

①出納帳

②決算書

③確定申告書

申立者がサラリーマン(=給与取得者)であるなら、副業をしない限り意識する必要はないです。

なお、記入忘れなどの故意に書類を改ざんする行為をしていないなら、免責不許可事由にはなりません。

・・・以上が「免責不許可事由(その1)の紹介でした。

次回は残りのケースについてご紹介しましょう。

では、また。

「予納金」とは? ~自己破産の手続費用~

こんにちは。管理人です。

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こんにちは。管理人です。

借金生活脱出の起死回生の必殺技、「自己破産」。

さて、自己破産も法的整理ですから、裁判所での手続きが必要です。

このため、自己破産を申し立てる場合、申立人は、裁判所に対し、一定の手続費用を納付しなければなりません。

この納付すべき金銭のことを「予納金」といいます。

自己破産の予納金としては、以下のものがあります。

 ・申立ての手数料(収入印紙で納付します)

 ・官報公告費

 ・引継予納金

自己破産の手続をするためには、裁判所に「予納金」を納付しなければなりません。

本稿では、自己破産の予納金とは何かについて、ご紹介いたします。

予納金とは?

自己破産の手続を行う場合、申立てをした人(申立人)は、裁判所に対して一定の金額のお金を支払わなければなりません。この支払金を「予納金」といいます。

破産手続にはさまざまな費用がかかります。

これらを支払うための費用として充てられるのが予納金(*1)です。

*1 破産手続を進めるために、最低限の手続費用は、申立人自らが予納金として裁判所に対して支払わなければならない、とされています。

予納金の種類

予納金には、以下のものがあります。

  • 手数料
  • 官報公告費
  • 郵券(郵便切手)
  • 引継予納金

では、順番に見ていきましょう。

(1)手数料

予納金のうち最も基本的なものは、破産手続の「手数料」です。

手数料は、破産事件の内容によって若干異なりますが、後述のとおり、個人の破産の場合には1500円です。

手数料は収入印紙で納付します。

(2)官報公告費

破産手続においては、自己破産をしたことなどが官報に公告されます。

この官報に公告するための費用も、予納金として自己破産の申し立て時に納付しなければなりません。

金額としては、1万円~1万9000円程度となっています。

(3)郵券(郵便切手)

自己破産申立てにおいては、債権者への通知等のために郵券(郵便切手)を裁判所に納付する必要があります。

郵券の金額や組み合わせは裁判所によって異なりますが、概ね5000円前後となっています。

これも予納金の一つといえるかもしれません。

(4)引継予納金

個人・消費者の自己破産において、最も高額な予納金が「引継予納金」です。

破産手続費用として用いられるものですが、大きな財産処分等がない個人の破産事件においては、破産管財人の報酬が大部分を占めることになります。

弁護士だって商売(?)ですから、報酬が出ないのならば、破産管財人を引き受ける人がいなくなってしまいます。

こういう事態を避けるため、あらかじめ一定の金額を確保しようという趣旨で創設された制度が「引継予納金」の制度です。

したがって、引継予納金が必要となるのは、「管財事件」の場合だけであり、同時廃止事件の場合には不要です。

なお、引継予納金の金額は、裁判所によって異なりますが、20万円から30万円が一般的でしょう。

同時廃止事件の場合の予納金

東京地方裁判所における自己破産の同時廃止事件の予納金は、以下のとおりです。(*2)

  • 手数料     1500円
  • 官報公告費 1万1859円
  • 郵券      4200円

*2 なお、裁判所によって金額が異なりますので、あらかじめ確認しておく必要があります。

少額管財事件の場合の予納金

東京地方裁判所における自己破産の少額管財事件の予納金は、以下のとおりです。(*3)

  • 手数料      1500円
  • 官報公告費  1万8543円
  • 郵券       4200円
  • 引継予納金 20万0000円~(事案によっては増額もありえます。)

*3 こちらも裁判所によって金額が異なる場合もありますので、あらかじめ確認しておく必要があります。

また、裁判所によっては少額管財の運用が無いという場合もありますので、その点も確認しておく必要があります。

少額管財でない管財事件の場合の引継予納金

東京地方裁判所における自己破産の少額管財でない管財事件(*4)の引継予納金の基準はいかのとおりとなっています。

  • 負債額5000万円未満       50万円
  • 負債額5000万円から1億円未満  80万円
  • 負債額1億円から5億円未満    150万円
  • 負債額5億円から10億円未満   250万円
  • 負債額10億円から50億円未満  400万円
  • 負債額50億円から100億円未満 500万円
  • 負債額100億円以上       700万円

*4 特定管財事件と呼ばれています。

・・・以上が自己破産における「予納金」のご紹介でした。

では、また。

自己破産の申立て(申請)ってどんな手続なの?

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こんにちは。管理人です。

借金をチャラにできる「自己破産」。

その、自己破産をするためには、まず最初に、裁判所に対して自己破産を申し立てる(申請する)必要があります。

本稿では、この自己破産の申立て(申請)とはどのような手続なのかについて、ご紹介いたします。

自己破産を開始するための手続

言うまでもないことですが、借金などの債務が支払不能(あるいは、債務超過)になった場合に、自動的に自己破産の手続が始まるわけではありません。

自己破産の手続を開始させるためには、「手続を開始させるための裁判手続」(=「自己破産の申立て)を行う必要があります。

すなわち、自己破産の手続を開始させるために、破産法で定められている管轄の地方裁判所に対して、自己破産の「申立て」を行うことになるわけです。

この「申立て」について、自己破産の「申請」といわれることもありますが、正式には「申立て」という名称です。

自己破産の申立てとは?

前述のとおり,自己破産の申請とは、自己破産の申立てのことですが、もっと正確に言うのであれば、「破産手続を開始させるための申立て」とは「破産手続開始の申立て」という手続を指していますが、実は、破産手続開始の申立ては、債務者本人だけでなく、債権者も申し立てることができます。(*1)

また、個人の破産手続においては、破産手続を行うだけでは意味がありません。

破産手続は、あくまで破産者の財産を換価処分して、それによって得た金銭を債権者に弁済・配当するという手続のことですから、債権者が支払いきれなかった債務は残ったままになってしまいます。

この破産手続上でも支払いきれなかった債務については、破産手続とは別の「免責手続」において裁判所から免責を許可されて初めて、支払義務を免れることができることになっています。

したがって、個人の破産手続では、破産手続を行った上で、上記の免責許可をもらうための手続も行うことが必要です。

そして、この免責手続を開始してもらうためには、破産手続開始の申立てとは別に、「免責許可の申立て」も行わなければなりません。

とは言うものの、実際のところ、破産手続開始の申立てと免責許可の申立ては同時に行われるのが通常です。

その意味でいえば、世間一般でいうところの「自己破産の申立て」とは、債務者本人が、破産手続開始と免責許可の両方の申立てであるといえるでしょう。

*1 債務者本人が申し立てる場合のことを「自己破産申立て」といい、債権者が申し立てる場合のことを「債権者申立て」といって区別することがあります。

自己破産申立ての手続

自己破産の申立て(破産手続開始・免責許可の申立て)は、法律で定められた管轄の地方裁判所に対して行います。(*2)

この自己破産の申立ては、法律上では、口頭ですることも可能ではありますが、実際のところは、「申立書」という書面を作成して提出する方法によって行うのが通常です。

自己破産の申立書は、各裁判所に書式・ひな形が用意されています。

「破産手続開始・免責許可の申立書」というタイトルとなっています。

*2 住民票に記載の都道府県の地方裁判所になりますので、わからない場合は弁護士や司法書士に尋ねるといいでしょう。

・・・以上が「自己破産の申立て」についてのご紹介でした、

では、また。

自己破産で免責されるまでの期間はどのくらいなんだろう?~免責までの期間~

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こんにちは。管理人です。

借金をチャラにできる「自己破産」。実際には自己破産において免責の効果が発生するのは、裁判所によって免責許可の決定がされ、その決定が確定したときです。では、いったいどのくらいの期間がかかるのでしょうか?

本稿では,この自己破産で免責されるまでの期間はどのくらいなのかについて,ご紹介いたします。

「免責許可決定」の確定

自己破産においての「免責」とは,借金などの債務の支払義務を免れることを意味します。つまり、借金などの債務を支払わなくてもよくなる(=借金をゼロ(チャラ)にできる)ということです。

自己破産を申し立てる一番の目的は、この免責を得ることに他なりません。

そして、免責を獲得するためには、自己破産を申し立てて、破産手続・免責手続を行ったうえ、裁判所に免責を許可する旨の決定(免責許可決定)を出してもらうことが必要です。

ただし、気を付けなければいけないのは「免責許可決定をしてもらえばすぐに免責の効力が発生する」わけではない、ということです。

免責の効力が発生するのは、免責許可決定が「確定」したときです。

一般的に、免責許可決定の日から2週間後くらいに、官報に免責許可決定がされたことが公告されます。

債権者等の不服申し立てがされないまま公告日の翌日から2週間を過ぎると、免責許可決定が確定します。

したがって,免責を獲得するためには、破産手続開始・免責許可の申立てから免責許可決定が確定されるまでの期間がかかることになります。

どのくらいの期間がかかるのかは,自己破産手続が管財手続なのか同時廃止手続なのかによって異なってきます。

少額管財の場合における免責確定までの期間

繰り返し書いてきましたが、破産手続には、破産管財人が選任される「管財手続」と破産管財人が選任されない「同時廃止手続」があります。

東京地方裁判所などでは、個人の自己破産の場合、管財手続であっても、手続が簡易化されているため引継予納金が少額で済む「少額管財」になるのが通常です。

少額管財事件の場合、通常では、破産手続開始・免責許可の申立てから、3か月後くらいに第1回の債権者集会が行われます。

この第1回債権者集会の時点で、すでに破産管財人の管財業務が終了していれば、以降の債権者集会は開かれません。

配当すべき「破産財団」が無い場合には、「異時廃止」となって破産手続は終結し、一方で、配当すべき「破産財団」が有る場合には、配当手続の期日が指定されることになります。

そして、その後、「免責審尋」に移り、破産管財人から免責に関する意見が述べられて終了となります。

それから、おおよそ1週間ほどの後に免責許可決定がされます。

前述のとおり、「免責許可決定が確定する」のは、免責許可決定日から概ね1か月ほどの時間がかかります。

以上から、「少額管財」の場合では、自己破産申立てから免責許可決定の確定までの期間は、最も短い場合でも4か月ほどかかる、ということになります。。

 一方で、第1回債権者集会期日時点で管財業務が終了していない場合には、第2回の期日が指定されます。(管財業務が終了するまで債権者集会の期日が続行されていきます)

それぞれの債権者集会期日の事案によって異なりますが、2~3か月程度かかるのが一般的でしょう。

債権者集会が続行した場合、管財業務が終了すれば、破産手続は「異時廃止」や「配当」となったあと、免責審尋が行われます。さらに、1週間ほどの後に免責許可決定がされます。

ただし、個人の破産の場合には、破産手続の終了まで1年を超える事案はごく一部です。

以上から、少額管財の場合、自己破産申立てから免責許可決定の確定まで「4か月~1年」ほどかかる、ということになります。

同時廃止の場合における免責確定までの期間

同時廃止の場合、破産手続の開始と同時に破産手続が廃止によって終了します。

その後は、「免責審尋」を行うだけになります。

東京地方裁判所などでは、通常では、破産手続の開始・同時廃止から2か月半くらいの後に免責審尋が行われ、その期日からおおよそ1週間ほどの後に免責許可決定がされます。

 前述のとおり,免責許可決定が確定されるのは、免責許可決定日から大体1か月ほどの時間がかかりますから、同時廃止の場合では、自己破産申立てから免責許可決定の確定までの期間は「3か月半~4か月」ほどとなります。

・・・以上が「自己破産における免責までの期間」についてのご紹介でした。

本稿が自己破産をご検討されている方々へご参考となれば幸いです。

では、また。