自己破産における別除権とは?~破産手続外で行使できる「担保権」~
担保権の優先的地位
冒頭でも書きましたが、お金を貸す場合、借主がお金を返さなかったケースを考慮して、借主が所有しているそれ相当の物を担保とするということがあります。
もし借主がお金を返さなかった場合、貸主は、その担保に取っている物を売却したり、自分のものにしたりすることになります。
住宅ローンなどはその典型ですね。
住宅ローンでお金を貸した銀行などは、借主がそのローンを利用して買った住宅等に「抵当権」という「担保権」を設定するのが一般的です。
もし、借主がローンを返済できなくなったなどの場合、銀行等は「抵当権」を実行して、抵当権を設定しておいた住宅等を競売にかけるなどして売却し、その代金を自分の住宅ローン債権に充当することができます。
さらには、担保権付きの債権は、他の担保権が無い債権(*1)に優先します。
要するに、上記の例で言えば、仮に銀行以外にも借主に対する債権を有している債権者がいたとしても、住宅等を競売などで売却した代金は、まず優先的に銀行の住宅ローン債権に充当されることになり、その後、余剰金が存在した場合のみ、他の債権者に分配されることになるのです。
このように、抵当権等の担保権が設定されている債権は、他の無担保債権に比べてはるかに優先的な地位を有しています。
そこで、破産手続においても、この担保権の優先的な地位を尊重する必要があります。
それが、「別除権」と呼ばれる取扱いです。
*1 これを「無担保債権」と呼ぶことがあります。
別除権とは?
「破産法2条9項」および「破産法65条1項」により、「別除権」とは、「破産手続開始時に破産財団に属する特定の財産に設定されている一定の担保権に基づき,その特定の財産について、破産手続によらずに優先的・個別的に弁済を受けることができる」という権利のことをいいます。
この別除権を有する人を「別除権者」といいます。
このように、法律的な感じで説明すると難しく聞こえてしまうのですが、要するに、「担保権」が設定されている場合は、担保権者は、破産手続が開始されていようがいまいが関係なく、自由に担保権を実行でき、しかも破産手続にかかわらず、その実行によって得た金銭を優先的に自分の債権に充足することができる、ということです。
上述の例でいえば、住宅ローン債務者について破産手続が開始されたとしても、住宅ローン会社は、それを考慮することなく住宅等を競売にかけてしまうことが可能であり、その上、競売によって得た、売却代金を住宅ローン債権に充てることができてしまう、ということです。
また、上で書いた通り「担保権」は、通常、担保を付けていない債権者に優先して、その担保を設定している物や財産から弁済を受けることができます。
そして、この担保権者の「優先的な地位」を破産手続上においても認めるというところに「別除権」の目的があります。
別除権の効果
前記のとおり、「別除権」として認められる担保権は、「破産手続外で行使する」ことができます。
「破産手続外で行使できる」とはどういうことかというと、通常の債権は破産債権として、破産手続において配当を受けるという形で回収することになりますが、「別除権」については、配当を待たなくても、担保権を行使して債権の回収を図ることができるということです。
したがって、別除権者は、破産手続中であっても、担保権を実行して債権の回収を図ることが可能です。
例えば、破産手続が開始された後でも「競売」などを申し立てることもできるということになります。
また、通常の破産債権者は、配当によってしか債権回収を図れなくなるので、通常は全額を回収することができません。
しかし、別除権者は、担保権を実行することによって、その担保物の価値によっては、債権の全額を回収することができる場合もあります。
さらに、別除権者が担保権を行使した結果、全額を回収できなかったとしても、その残りの回収できなかった部分については、通常の債権者と同様に破産手続に参加することができます。
つまり、担保を実行しても回収できなかった部分があっても、その部分については、破産手続における配当によって,さらにいくらかの回収を図ることができるというわけです。
・・・以上が「自己破産における「別除権」について」のご紹介でした。
本稿が自己破産を視野に入れている方々のご参考となれば幸いです。
では、また。