ちょっとややこしいですが~過払い金の計算方法を理解しよう!
こんにちは、借金生活リセット倶楽部のレディックです。
過払い金が発生していた場合、返還請求を行うためにも、実際にどれくらいの金額を支払って、どれくらいの過払い金となったかを確認する必要があります。
では、いったいどのようにして過払い金を計算するのでしょうか?
何やら面倒な計算方法がある、と敬遠される方も多いとは思いますが、基本がわかってしまえば、それほど難しいものではありません。
・・・というわけで、今回は「過払い金の計算方法を理解しよう!」です。
1.過払い金請求とは?
過払い金とは貸金業者に払いすぎた利息を指す用語です。本来の金利よりも多く払った分(=過払い金)については貸金業者から取り戻すことができます。
貸金業者の貸付の際に発生する上限金利は「利息制限法」という法律で定められており、借金の額に応じて15~20%となっています。また、「利息制限法」とは別の「出資法」という法律があり、この法律では2010年6月までは年29.2%を上限金利としていました。*1
そのため、2010年以前に法改正があるまで多くの貸金業者は、出資法の上限金利29.2%を理由に本来の金利よりも高い金利を取っていました。利息制限法の上限金利を超える利息を取ったとしても出資法の上限金利29.2%までであれば罰せられなかったからです。
この出資法と利息制限法の上限金利の差を「グレーゾーン金利」と呼び、このグレーゾーン金利で支払った分が過払い金です。また、貸金業者に払いすぎた過払い金を、取り返す手続きを「過払い金請求」といいます。
2.引き直し計算とは?
過払い金が発生するのは、利息制限法が定めている上限金利*2を超える金利、いわゆる「グレーゾーン金利」での取引があった場合となります。
過払い金があるかどうかを確認するために、貸金業者などから取引の履歴を開示してもらい、グレーゾーン金利が適用されている期間があった場合、正しい金利で計算し直します。これを「引き直し計算」と言います。
この「引き直し計算」で算出された金額(=過払い金)を貸金業者に請求しますから、計算方法を間違えたりすると、請求できるはずができなかったり、請求金額が少なくなったりすることもあります。
以上から、自身で行うのであれば正確に行うように留意することが大事です。
もし、自身で計算するのに自信がなかったり、時間がかかってしまう、もっと言うと「面倒なことはしたくないなぁ」と敬遠される方は専門家(弁護士や司法書士)に依頼すると良いでしょう。*3
3.過払い金を計算してみよう!
では、いくら借りて、いくら返済していたとしたら、どれくらい過払い金が発生するのか?実際に計算してみましょう!
この計算に必要なのは「利息制限法」と「出資法」の上限金利のうち、どちらを適用したかで差が出てきます。
【100万円を借りて毎月5万円を返済していた場合の計算】
利息制限法(年利15%)の場合
1年間の利息は・・・
100万円×15%=150,000円(1日当たり410円)
1カ月後の利息は・・・
410円×30日=12,300円
1カ月後の返済額は5万円なので元本返済分は・・・
50000円 - 12300円 = 37,700円
1か月後の元本は・・・
100万円 - 37,700円 = 962,300円
となります。
出資法(年29.2%)の場合
1年間の利息は・・・
100万円×29.2%=292,000円(1日当たり800円)
1カ月後の利息は・・・
800円×30日=24,000円
1カ月後の返済額は5万円なので元本返済分は・・・
50,000円 - 24,000円 = 26,000円
1か月後の元本は・・・
100万円 - 24,000円 = 974,000円
となります。
過払い金は?
以上から1カ月当たりの過払い金は・・・
24000円 - 12300円 = 11,700円
となります。
なお、上記は1か月分ですが、年間での利息累計額は利息制限法(年利15%)の場合は約15万円ですが、出資法(年利29.2%)の場合、約32万円となりますから、実に17万円程度が過払い金となります。
また、 上記例と違って実際は返済期間や金利、返済遅延の有無などで大きく変わってきますし、借入先が複数になってくると各々について同様に考慮しなければいけなくなりますので、結構、ややこしくなってきます。
4.過払い金計算での考慮点
過払い金計算では、完済後10年以上を経過しているような場合でも過払い金が請求できるケースもありますので注意が必要です。
完済後に同じ業者から再度借入しているケース
借金を一度完済した後に、同じ貸金業者から借入している場合、前後の取引を「一連の取引」と捉えるか、「別々の取引*4」と捉えるかで過払い金の事項の起算日が変わってきますので注意を要します。*5
同一の業者から「借りては返す」形で繰り返してきた場合、「一連の取引」とみなされるかどうかで過払い金の額が多くなりますが、これを決定するのは「基本契約書」になります。*6
なお、このケースについては訴訟になった場合、裁判官の判断によりますので、専門家(弁護士や司法書士)に相談されるほうが良いでしょう。
過去に返済遅延があったケース
過去に借金返済の遅延が生じたケースでも過払い金請求を行うことができます。*7
過去に返済遅延があったり、延滞遅延金を支払った場合も、専門家に相談するほうが良いでしょう。
取引履歴に古い履歴が存在しないケース
過払い金請求ではまず最初に業者から取引履歴の開示を要求することから始まります。(この「取引履歴」は過払い金計算で重要な要素となります)
しかし業者の中には古い履歴について処分していることから開示しないところもあります。*8
このようなケースでは取引内容で不明な部分を推測して引き直し計算を行うことで過払い金の有無を調べることが可能です。
・・・というわけで今回は「過払い金の計算方法」について整理しました。一つ一つの計算はそれほど難しくはありませんが、取引内容(返済期間・利率・返済遅延の有無(=延滞損害金の支払い有無)等)が重要な要因となっていて、その要素の関わり方次第で非常にややこしいものとなっています。
弁護士事務所や司法書士事務所ではこれらの計算などについて無料で行ってくれるところも多いですので、お心当たりのある方は相談されることをおススメします。
では、また。
*1:現在では「出資法」の上限金利は「利息制限法」と同じに設定されています
*2:利息制限法では、元金10万円未満の場合年15.0%、同じく10万円以上100万円の場合、年18.0% 同じく100万円以上の場合年20.0%と定めている
*3:相手は法律のプロですから、この手の作業はお手のもです
*4:「取引の分断」といいます
*5:時効は10年ですので、複数の取引が別々の場合は、10年以上前の取引は過払い金返還請求の対象外となります
*6:最初に結んだ基本契約書が2回目以降は省略されているかどうかにかかってきます
*7:ケースによっては延滞遅延金を支払ったことで、返済が送れなかった人と比べて多くの過払い金が返還されることがあります
*8:金融業者の取引履歴保管義務が10年であるためです